清研時報

1987年3月号

根本的な解決が急がれる廃棄物運搬車の青ナンバー問題
  1. 道路運送法の適用は清掃法当時からの業界の願い
  2. 鹿児島県下で発生した青ナンバー騒ぎ
  3. 廃棄物運搬車についての九州運輸局の見解
  4. 青ナンバー問題の根本的な解決策について
道路運送法の適用は清掃法当時からの業界の願い
  • 一昨年、昨年と、2年つづけて鹿児島県で青ナンバー騒ぎが発生しましたが、毎年このような騒ぎが起こるようでは、市町村の廃棄物処理業務の担当者や業者たちは困りますね。
  • 根本的な打開策を講じないと、各地で似たような問題が起こりますよ。
  • なぜ青ナンバー騒ぎが発生したのか、どうすれば似たような問題が起こらないようにすることが出来るかについて、関係者は、真剣に考える必要がありますね。
  • この青ナンバー問題は、清掃法当時から解決を迫られていた問題です。もっとも、以前は黄ナンバーと云っていましたが……。
  • そうですか、清掃法当時から問題になっていたのですか。
  • 問題といっても、当時は、業者の側から黄ナンバーにしてくれと要望していたものです。
    昭和37年5月25日に、日本環境保全協会の前身である日本清掃協会が主催して、大阪の中之島公会堂で、はじめて全国清掃業者大会が開かれた折に、佐賀県清掃組合から『黄ナンバー切り替えの件』が提案され、岩手県衛生事業協同組合からも『黄色ナンバー申請に対する早期許可の件』が提案され、早急に実現するように努力するという申し合わせが行われました。そのころ、自治労による全国的な清掃事業の直営化斗争が日を迫って激しくなり、その年の12月に招集された通常化国会に、社会党参議院議員藤田藤太郎氏外4名から、清掃事業の民間委託禁止と手数料廃止を骨子とする『清掃法の一部を改正する法律案』が提案され、厚生省、全国市長会および日本都市センターでつくっていた清掃事業研究委員会でも、当時の請負いの形態を市町村の直営に切り換えてゆく方針を確認したことが報ぜられて、厚生省や自治省などのお役所は直営ムードに包まれていました。私は、その直営ムードを一掃し、清掃事業の直営化を狙った社会党藤田参議院議員ら提案の『清掃法の一部を改正する法律案』の成立を阻止する必要があると考えて、全国の清掃業者に呼びかけ、昭和38年3月9日、東京の町村会館ホールで全国清掃業者総決蹶大会を開催しましたが、そのときも、直営化反対を決議しただけでなく、当日参加した業者の総意で、「汚物処理の責任が市町村にあることは明白である。われわれは、市町村の処理計画に従い、市町村が処理すべき汚物を、市町村に代わり、処理施設まで運搬する業者である。当然に道路運送法の適用を受けるべきものであるが故に、この当然の要求を実現することを期する。」という決議を行ったくらいです。
  • それから20数年たっていますが、いまだに実現していないわけですね。
  • そうです。私は昭和38年末に全国清掃協議会の理事長をやめ、清掃問題研究会の仕事からも遠ざかっていました。再び清掃問題研究会の仕事を始めたのは10年ばかり前からですが、清掃業界には、以前からの懸案で、いまだに解決されないままになっている問題が意外に多いのに驚きました。青ナンバーの問題もその1つです。
鹿児島県下で発生した青ナンバー騒ぎ
  • ところで、昨年、鹿児島県のK市で発生した青ナンバー騒ぎは、鹿児島陸運支局が、ごみを中継所から処理施設まで運搬する車両は白ナンバーの車ではいけない、と云ったことから、ごたごたが起ったのでしたね。
  • そうです。
  • K市では、ごみの収集運搬事業は、その大半は市が直営で行い、一部を民間業者に委託して行わせていて、その民間業者が使用している車両は白ナンバーだと聞いていますが……。
  • そのとおりです。
  • それを、また、なんで、青ナンバーの車でなければならないなどと云い出したのでしょうか。
  • いや、その車を青ナンバーの車でなければならないと指示したのではありません。実は、K市の塵芥処理施設は昭和45年3月に運転開始した1日12トン処理の老朽施設で、今度それを取りこわして、その跡地に新しく建て直すことになり、その間、隣りのM市の処理施設で処理してもらうことにしたのですが、隣接しているとはいえM市の処理施設までは相当の距離があるため、K市が収集運搬に使っている車両でM市の処理施設まで運ぶとすれば、車両を増やし、作業員も増員せねばならず、それも1年か2年の短い期間で、K市の塵芥処理施設が新しく出来上れば、車も作業員も減らさなければなりません。そこで、その暫くの間だけ、ごみを中継所に集めて、中継所からM市の処理施設まで運搬する仕事を新規の業者に委託することにしたわけです。その新たに中継所からM市の処理施設までごみを運搬するのに使用する車両について、青ナンバーの車でなければならないという騒ぎが持ち上がったものです。
  • それでは、従来から市の委託を受けてごみの収集運搬に従事してきた既存の業者が、ステーションから中継所まで運ぶのは白ナンバーの車でよいが、中継所からM市の処理施設まで運ぶ車は青ナンバーでなければならない、ということでもめたわけですね。
  • そうです。
  • おかしな話しじゃありませんか。ステーションから中継所まで運ぶのは自家用自動車でよいが、中継所から処理施設まで運ぶのには営業用自動車でなければならないという、そのわけがわかりませんね。
  • 納得できないでしょう。
  • ええ。理解できませんね。
  • K市でし尿の収集運搬業務を行っているN社の社長や役員の皆さんは旧知の間柄で、専務取締役の1人は隣りの町で10年以上も前からごみの収集運搬業務も行っており、相当の経験を有している人物です。K市の計画を知ったN社では、廃棄物処理法施行令第 4条に定める『委託の基準』を満たすべく車両の手配までしていたのですが、K市内の運送業者でトラック協会の役員をしているというA市が、中継所から処理施設まで運ぶのには青ナンバーの車でなければならないのだから、自分にやらせてもらいたいと申し出たため、K市の担当課長が鹿児島県陸運支局の輸送課に相談したところ、ごみを中継所まで運ぶのは白ナンバーの車でよいが、中継所から処理施設まで運搬する車両は青ナンバーの車でなければならない、と云われたので、陸運支局の意向を無視するわけにはいかないということになり、N社では困っているという話しを耳にしたものですから、早速K市を訪ねて担当課長に会ってみました。
  • K市の担当課長は困っていたでしょうね。
  • 陸運支局の意向には従わなければなるまいと考えていたようです。
  • 無理もありませんね。
  • そこで、厚生省調べによれば、昭和59年3月末現在で、委託業者の分と許可業者の分を合わせたごみ収集運搬車両の総数は1万9,932台となっているが、その殆どは白ナンバーで走っている実情を説明しました。全国各地で、ステーションから処理施設まで運んでいる車も、ステーションから中継所まで運んでいる車も、中継所から処理施設まで運んでいる車も、その殆どが白ナンバーで走っているのに、K市だけは青ナンバーの車でなければ運んではいけないと云われて、ハイ、そうですか、と素直に従うことに抵抗はありませんか。陸運支局に相談すれば、陸運支局の諸君は、おそらく廃棄物処理法の規定まではご存知ないでしょうし、道路運送法の規定に基づいて、「自家用自動車は有償で運送の用に供してはならない」ことになっているので、営業用自動車でなければならないと答えるでしょう。ところが、全国各地の市町村では、一般廃棄物の収集・運搬業務を委託するに当たって、いちいち陸運支局に相談なんかしてはいませんよ、と説明しました。
  • K市の担当課長の反応は、どうでしたか。
  • 陸運支局の輸送課から云われた言葉があるものですから、容易に周調してはくれませんでした。無理からぬことです。ですから、清掃業者たちは、清掃法当時から道路運送法の適用を希望し、自家用自動車から営業用自動車に切り換えてもらいたいと要望しつづけてきたのだが、一般廃棄物処理業は、汚物取扱業と呼ばれていた当時から、行政管理庁による≪日本標準産業分類≫の中で、『サービス業』に分類されているため、現在に至るまで、その要望がいれられず、いまだに白ナンバーのままになっている事情を説明しました。
    また、昭和57年秋、一般廃棄物の海洋投入処分業に従事している業者たちの依頼を受けて、中小企業等協同組合法に基づく事業協同組合の設立を手伝った折に、事業の性質上、厚生大臣の認可は当然受けねばならないが、業者が海洋投入に使用する廃棄物排出船は、海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の定めるところに従って海上保安庁長官の登録を受けることを義務づけられており、それだけでなく、「海上において船舶により物の運送をする事業」は船舶運航事業として海上輸送法の規定の適用を受けるべきものとされているので、運輸大臣の認可も受けねばならないのではないかという意見もあり、戦時中、東方会時代の同志だった長谷川峻代議士が運輸大臣をしていたときだったので、長谷川運輸大臣に相談し、大臣官房政策課(現在の運輸政策局政策課)を中心に、環境課、海洋課、それに船舶局、海運局、港湾局、海上保安庁警備救難部などの担当者の間でいろいろと検討してもらった結果、一般廃棄物海洋投入業は『サービス業』であって、『運輸業』とは認められないため、運輸大臣の認可を受ける必要はないということになり、結局、翌58年4月27日付で厚生大臣の設立認可だけを受けて協同組合をスタートさせたことがあるので、そのいきさつを説明し、厚生省も、その設立認可に当たって、一般廃棄物海洋投入業が『運輸業』ではなく『サービス業』であることを理由として、組合員が資本金1,000万円を超え又は常時使用する従業員の数が50人を超えたときは、直ちにその旨を届け出なければならないことを定款で定めるように求めたことについても説明しました。
  • お話しの途中ですが、厚生省では事業協同組合の設立認可をするに当たって、組合員の資本金の額や従業員の人数まで指図するのですか。
  • それは、中小企業等協同組合法第7条に定める独占禁止法との関係で、製造業や運輸以下のもので組織されておれば、小規模事業者の組合とみなされることになっていますが、小売業やサービス業では、資本の額又は出資の総額が1,000万円以下又は常時使用する従業員の数が50人以下のもので組織されていなければ、小規模事業者の組合とはみなされないことになっているからです。
  • そうですか。しかし、市町村が直営事業として自ら一般廃棄物を収集し、運搬し、処分するのは、住民に対するサービスといえるでしょうが、市町村が自ら処理することが困難であるところから、業者が市町村に代わり、市町村の処理計画に従って一般廃棄物の収集、運搬又は処分を行っているのが、どうして『サービス業』になるのか、腑に落ちませんね。
  • その点は私も納得できませんが、それについては後で検討することにしましょう。行政管理庁(現在の総務庁)が制定している≪日本標準産業分類≫で一般廃棄物処理業がサービス業に分類されている以上、現時点では、これに従わざるを得ません。運輸省や厚生省がこの分類に従ったのは、うなづけます。運輸省や厚生省だけではありません。公正取引委員会でも、中小企業金融公庫などでも、この分類を基準にしているようですよ。
  • なるほど。
  • ところで、葬儀業は、≪日本標準産業分類≫で『サービス業』に分類されていますが、霊きゅう自動車で死体を運ぶ事業は『運輸業』に分類されているため、霊きゅう車は青ナンバーになっています。しかし、廃棄物を運ぶ事業は、現在までのところ『運輸業』に分類されていません。このことについても、行政管理庁行政管理局統計主幹が編集し、(財)全国統計協会連合会から発行されている≪日本標準産業分類≫の内容を指摘しながら説明しました。更に、一昨年、同じ鹿児島県下のX衛生組合で発生した青ナンバー騒ぎのいきさつについても説明しました。
  • X衛生処理組合の問題は、し尿の海洋投入処分の委託を受けた業者が、青ナンバーのバキューム車を持っていて、貯溜槽から廃棄物排出船までし尿を運ぶ仕事は自家用自動車では出来ない筈だから、自分にやらせてもらいたいと申し入れたことから騒ぎとなり、結局は、白ナンバーの車でよいということになったのでしたね。
  • そうです。そのいきさつを説明し、同じ鹿児島県下で、ごみの中継所に当たるし尿の貯溜槽から、ごみの処理施設に当たるし尿の排出船まで運搬する車両は白ナンバーでよいという前例が示されているのだから、その前例にならったらどうですかと話したところ、K市の担当課長も、同じ鹿児島県内でそんな前例があるなら、その前例にならうようにしようということになりました。
  • わかってくれたのですね。
  • わかってくれたようでしたから、これで解決するものと思っていたところ、またN社から連絡があり、K市の担当課長が鹿児島陸運支局に念を押したところ、陸運支局輸送課の担当者が、ごみを中継所から処理施設まで運ぶのは青ナンバーの車でなければならない、青ナンバーの車で対応できない場合は白ナンバーの車を使用することを許可しようと答えたというので、青ナンバーの車を持っている運送業者が名乗り出ている以上、青ナンバーの車を優先しなければなるまいということになり、明日午後1時に契約する段取りになったと云ってきました。電話連絡を受けたのが午後9時半すぎであったため、翌朝1便で鹿児島に飛び、陸運支局を訪ねました。私は、X衛生処理組合の問題のときも、鹿児島陸運支局を訪ね、輸送課長と係長に会っていましたし、あの課長や係長がどうしてそんなことを云うのかと不思議に思いながら訪ねましたところ、一昨年3月19日に会って話し合った課長も係長も、その直後の4月1日付の異動で転出していて居ませんでした。そこで、初対面の担当者に会って、1年半前にX衛生処理組合の問題で申し入れをしたときと同じような内容の話しを繰り返さなければならないことになりました。
廃棄物運搬車についての九州運輸局の見解
  • 私が鹿児島陸運支局に着いたのは正午少し前でしたが、約1時間後にはK市が青ナンバーの車を所有している運送業者のA氏と契約する運びとなっているということだったので、昼食を後回しにして会ってもらったところ、担当者の意見は、次のようなものでした。
    「ごみを各家庭から中継所まで運ぶときの荷主は住民で、運搬する車は白ナンバーでよい。しかし、中継所から処理施設まで運ぶときの荷主は市町村長で、運搬する車は青ナンバーでなければならない。しかし、青ナンバーの車で対応できない場合は、道路運送法の規定により運輸大臣から権限の委任を受けた地方運輸局陸運支局長の許可にかかる自家用自動車を使用してもよい。これは、九州運輸局の指示であり、昨年、鹿児島県内で、し尿を貯溜槽から排出船まで運搬する車についてこの方針を採用し、今年も、その方針に基づいて許可の更新をしたが、今回も、これと同じ考え方に基づいて指導した。ただ、昨今のX衛生処理組合の場合は、処理施設で処理しきれないし尿を海洋投入処分するについて、貯溜槽から排出船まで運ぶ車は青ナンバーでなければならないか、白ナンバーでもよいかという問題だったが、結局、既存の清掃業者たちが、7年有余の間、余剰し尿を処理するために自己の所有地を提供し、貯溜槽をつくって、そこで処理してきた実績もあり、その清掃業者たちの所有地に設けられた貯溜槽から排出船まで運ぶという事情もあったところから、清掃業者たちの白ナンバーの車に道路運送法第101条第1項但し書きの規定を適用して処理したが、今度のK市の場合は、X衛生処理組合のような特別な事情があるわけではないので、青ナンバーの車で対応できない場合に限って、市が委託する業者の自家用自動車に道路運送法第101条の規定による許可を与えるようにしようということにしたのだ。」と。
  • 道路運送法第101条第1項の規定というのは、どんな規定ですか。
  • 自家用自動車は、有償で運送の用に供してはならない。但し、災害のため緊急を要するとき、又は公共の福祉を確保するためやむを得ない場合であって運輸大臣の許可を受けたときは、この限りでない。

    という規定です。
  • その運輸大臣の許可というのが、地方運輸局の陸運支局長の許可でもよいことになっているのですね。
  • ええ。道路運送法第122条に『権限の委任』の規定があって、その運輸大臣の権限を地方運輸局陸運支局長に委任することができると定められています。
  • その点はわかりました。しかし、ごみを各家庭から中継所まで運ぶときの荷主は住民だ、という解釈は、おかしいじゃありませんか。
  • それについては、X衛生処理組合で騒ぎが起こったときも、九州運輸局貨物係の担当者が、し尿を各家庭から貯溜槽まで運ぶときの荷主は住民だから、白ナンバーの車でよいと指示したというので、廃棄物処理法の規定により、し尿やごみ等の一般廃棄物を一定の計画に従って収集し、運搬し、処分するのは市町村の義務とされていて、市町村が自ら収集し、運搬し、処分することが困難な場合は、民間業者に代行させることになっている事情を説明し、し尿を民間業者が各家庭の便所から貯溜槽まで運ぶ場合も、貯溜槽から処理施設まで運ぶ場合も、荷主は依頼者である市町村である点を指摘しておいたので、その点は理解してもらっているものと思っていたと話したところ、その折の九州運輸局貨物係の担当者も異動で替わっているということでした。
  • 役所は異動があるから困りますね。
  • 異動のたびに、交替した担当者に同じ内容の話しをしなければならぬというのは、どうかと思いますが、致し方ありません。そこで、改めて、廃棄物処理法の条文を示して、一般廃棄物の処理に関する事務が市町村の固有事務とされていることを指摘し、ごみについては、全国の市町村が、例外なく、住民に対して、燃えるごみ、燃えないごみ、大型ごみ、資源再生ごみ等に分け、所定の日の所定の時間までに、各別の容器に入れて、所定の場所(ステーション)に集めるように指示していること、市町村から委託を受けた業者は、住民がステーションに集めたごみを収集して処理場まで運び、ところによっては、中継所まで運び、中継所から処理施設までは別の業者が運ぶようになっていることを説明しました。
  • その説明で、ステーションまで持ち出すまでの荷主は住民であるが、ステーションから中継所まで運ぶときの荷主も、中継所から処理施設まで運ぶときの荷主も、どちらも市町村長であることがわかったでしょうね。
  • 陸運支局の担当者も、うなずいていました。私は、更に言葉をついで、仮に九州運輸局の見解どおり、ステーションから中継所まで運ぶときの荷主が住民であるとしても、それは業者自身が荷主ではないということだから、道路運送法の規定により、「他人の需要に応じ、自動車を使用している貨物を運送する自動車運送事業」として、同法の適用を受けるのが当然ではないか。そうだとすれば、中継所から処理施設まで運ぶ車も、ステーションから中継所まで運ぶ車も、どちらも青ナンバーでなければならない筈だ。ステーションから中継所まで運ぶ車は白ナンバーでよいが、中継所から処理施設まで運ぶ車は青ナンバーでなければならないというのは筋が通らないと思うが、どうか、とただしました。
  • 陸運支局の担当者は、なんと答えましたか。
  • 「なるほど」と云って、反論はしませんでした。
    私は、全国の清掃業者が、清掃法当時から道路運送法の適用を希望し、白ナンバーを青ナンバーに切り替えてもらいたいと望みながら、一般廃棄物処理業が、行政管理庁……現在の総務庁が制定している≪日本標準産業分類≫によって『サービス業』に分類されているため、厚生省の調べによれば、昭和59年3月末現在で1万8,606台あるといわれた業者使用のし尿収集運搬車と、1万9,932台あるといわれた業者使用のごみ収集運搬車のほとんどが白ナンバーのままになっている実情を説明するとともに、行政管理庁行政管理局統計主幹の編集にかかる≪日本標準産業分類≫を示して、葬儀業は『サービス業』に分類されているが、霊きゅう自動車で死体を運搬する事業所は『運輸業』に分類されているため、霊きゅう自動車は青ナンバーになっていること、そこで、一般廃棄物を自動車で運搬する事業所も『運輸業』に分類されるよう、当局に働きかけていること、しかし、現時点では『サービス業』とされていて、全国の車両のほとんどが白ナンバーのままで走っているのに、K市の場合に限って、しかも、ステーションから中継所まで運ぶ車は白ナンバーでよいが、中継所から処理施設まで運ぶ車は青ナンバーでなければならないというのは不合理である。現に、鹿児島陸運支局のお膝もとの鹿児島市では、吉野町の貯溜槽から処理施設まで2台の10トン車が白ナンバーでし尿を運んでいる。鹿児島市ばかりではない。九州運輸局管内の全域において、し尿を貯溜槽から処理施設まで、又は、ごみを中継所から処理施設まで白ナンバーの車で運んでいる。これをすべて青ナンバーに切り替えさせるというのであれば、K市の中継所から処理施設までごみを運ぶ車も青ナンバーでなければならぬという指示も納得できる。他の地区の車は白ナンバーのままにして、K市だけは青ナンバーでなければならぬと指示することに無理がある。それがわかったら、K市の担当課長に直接電話して、青ナンバーの車で対応できない場合は白ナンバーの車でもよいと指示しているのを取り消してもらいたい。あと20分もしたら、午後1時には、K市では運送業者との間で契約する段取りになっているそうだから、私がこれから飛んで行っても時間的に間に合わないからだ、と云って頼みました。
    陸運支局の担当者は、私の話しをよく聞いてくれて、早速K市の担当課長に連絡すること、午後1時になったら、九州運輸局に連絡して、改めて検討してもらうようにすることを約束してくれました。私は、その足でK市を訪れましたが、市長が不在であったため、翌朝9時に市長と会うことにし、委託契約の件については、明日まで延期してもらうことにしました。
  • 結局、どうなりましたか。
  • 翌朝9時、市長に会って、要望の趣旨をしたためた文書を渡し、全国どこもごみを中継所から処理施設まで運ぶ車は白ナンバーのままで走っているのに、K市だけが青ナンバーの車でなければならないというのは筋が通らないこと、ごみの収集・運搬を委託する基準は、廃棄物処理法施行令第4条に定められており、その第1号から第3号までに定める受託者の資格に適合する者に市町村が委託するについて、誰からも制約を受けるものではないことなど、私の見解を述べておきましたところ、鹿児島陸運支局の担当者からもK市の担当課長に「誰に委託するかを決めるのは市長の権限であるから、市長が委託した業者の車が自家用自動車であれば、即日、道路運送法第101条に基づく許可証を交付することに決めた」という連絡があり、K市では、申請していた両社……N社と、運送業者で以前にK市の委託を受けてごみ処理業務に従事したこともあるというA氏との間で、競争入札をすることになりました。
  • 競争入札ですか……。
  • K市では、競争入札にするが、業務の性質上、安いからということで最低価格の入札と契約するわけではない、適正に業務を行うために必要な最低価格を算出し、それ以下の価格では落札しない、という方針を示したそうです。これに対して、A氏は、あくまでも青ナンバーでなければならない筈だと主張したそうですが、結局、競争入札するのはやめて、8月25日から両社が1か月交替で実施することになり、一件落着となりました。
青ナンバー問題の根本的な解決策について
  • 青ナンバー問題は、根本的に解決しておかないと、また再発するでしょう。
  • 昭和52年にも、茨城県環境衛生部長が、青ナンバー問題で、東京運輸局……現在の関東運輸局自動車第2部長に照会し、東京運輸局では同年9月8日付・貨2乙をもって回答したという話しを聞いておりますが、廃棄物を運搬する自動車の取り扱いについては、厚生省の担当者と運輸省の担当者が話し合って、統一見解を示す必要がありますね。
  • さきほどのお話しの中で、葬儀業は≪日本標準産業分類≫で『サービス業』に分類されているが、霊きゅう自動車業は『運輸業』に分類されているということでしたが、それと同じように、一般廃棄物処理業は『サービス業』に分類されていても、し尿運搬業や、ごみ運搬業、浄化槽汚泥運搬業については『運輸業』に分類されることになれば、当然、青ナンバーに切り替えられるのではないでしょうか。
  • 私は、そうすべきだと考えて、総務庁統計基準部の産業分類の担当者に申し入れをしていますが、次回に≪日本標準産業分類≫の一部が改訂される機会には実現するのではないかと期待しているところです。
  • そうなることを祈りたいですね。
  • 清掃業者の皆さんも、ただ漠然と青ナンバーにせよと叫んでいるだけでなく、組織的な活動として、≪日本標準産業分類≫の改訂作業に携わる人たちに申し入れを行う必要がありますよ。
  • 次回の改訂は、いつ行われるのですか。
  • いつと決まっているわけではありません。標準産業分類がはじめて設定されたのが昭和24年10月で、それ以来、26年4月、28年3月、29年2月、32年5月、38年1月、42年5月、47年3月、51年5月、59年1月と、不定期に、必要に応じて改訂されていて、次回がいつになるかは、今のところ、まだ決まってはいないようです。
  • その改訂作業に携わっている人たちは、どんな人たちですか。
  • 昭和59年6月に発行された行政管理庁行政管理局統計主幹編集・(財)全国統計協会連合会発行の≪日本標準産業分類≫の巻末に、関係者の名前が出ています。それによれば、分類部会は、竹内啓・統計審議会委員を部長会として、専門委員に、三潴信邦・筑波大学社会科学系教授、吉田富義・専修大学商学部教授、大友篤・宇都宮大学教養部教授、江見康一・一橋大学経済研究所教授、星守・千葉大学工学部講師、岡本英雄・上智大学文学部助教授のほか、各省庁から課長クラスの人たちが選ばれており、日本銀行からも調査統計局経済統計課長が加わっています。
  • 厚生省や運輸省からも専門委員が出ているのですね。
  • 勿論出ています。厚生省からは統計情報部衛生統計課長、運輸省からは情報管理部調査企画課長が専門委員になっています。
  • それじゃ、その人たちに働きかければよいわけですね。
  • そうです。しかし、そのほかにも、産業分類幹事会の幹事に働きかける必要があります。
  • その幹事には、どんな人たちがいますか。
  • 総務庁統計基準部統計審査課の担当事務官をはじめ、各省庁の関係課から幹事が出ています。
  • やはり、厚生省からも、運輸省からも、出ているのですね。
  • ええ。厚生省は統計情報部管理課から、運輸省は情報管理部調査企画課から出ています。
  • それでは、清掃業界としては、環境整備課は無論ですが、厚生省から出ている分類部会の専門委員と、産業分類幹事会の幹事に陳情すべきですね。
  • そのほか、総務庁統計基準部統計審査課の担当事務官にも陳情することを忘れてはなりますまい。運輸省から出ている担当者にも陳情すべきでしょう。それらの人たちから、し尿や、浄化槽汚泥や、ごみを運搬する事業は『運輸業』に分類すべきだということを提案してもらうように働きかけるべきです。
  • そうですね。
  • そして、環境整備課に陳情して、同課が廃棄物処理業務の担当課としての立場で、運輸省の担当課と話し合い、それが実現するまでの間は、現在の白ナンバーのままでよいことを確認し合った上で、統一見解を文書にして、関係機関に通知してもらっておく必要があります。
  • なるほど。そうしておけば、鹿児島県下で一昨年、昨年と続いて起こったような騒ぎが再発するようなことはありませんね。
  • このまま放置しておけば、同じ県内で、市町村長の許可又は市町村の委託を受けて、白ナンバーの車で、し尿やごみを貯溜槽や中継所から処理施設まで運ぶ業者も居れば、陸運支局長の許可証がなければ、市町村長の許可又は市町村の委託を受けただけでは、白ナンバーの車でし尿やごみを貯溜槽や中継所から処理施設まで運ぶことが出来ない業者も居るという、おかしな現象が解消しないことになります。
  • それだけでなく、これからも益々おかしな現象が拡がってゆく可能性すらありますよ。やはり、厚生省担当課長通知とか、運輸省担当課長通知で、統一見解を徹底させておく必要がありますね。
  • それと、もうひとつ大切なことは、し尿や、浄化槽汚泥や、ごみの運搬業が『運輸業』に分類されるように改められた暁には、陸運支局は、市町村長の許可を受け又は市町村の委託を受けた業者が、そのことを証する書面を提出したときは、直ちに許可を与えるようにすることを明確にしておくことです。青ナンバーをもらうために半年も1年もかかるようでは、市町村は一般廃棄物処理計画を定めることは出来ませんからね。

勉強会開催のすすめ

あなたのところでは、仕事の上で、何か心配なことはありませんか。地方では、今もなお、既存の一般廃棄物処理業者が、十分な施設と人員をそろえて操業しているにもかかわらず、市町村長が、新たな申請者に許可を与えようとして、騒ぎを起こしているところがあります。浄化槽清掃業の新規許可問題にからんで、裁判沙汰にまで発展し、既存の業者を困らせているところもあります。し尿の収集・運搬手数料が、同じ県内でありながら、1,800ℓ当たり22,000円のところもあれば、6,840円で、しかもそのうち1,800円を処理施設の使用料(投入料)として徴収され、手許には5,040円しか入らないところもあります。下水道の整備や、海洋投入処分の廃止など、市町村の一般廃棄物処理計画の変更に伴い、業務の縮小または廃止を余儀なくされている業者に対して、補償問題が、はかばかしく進んでいないところもあります。これらは、行政側の無責任な、もしくは曖昧な法令の解釈、運用に起因する場合が多いようですが、業者側にも責任がないとは云えません。一般廃棄物処理業者や、浄化槽清掃業者は、法律に基づく仕事をしているのですから、廃棄物処理法や浄化槽法などは無論のこと、その他の関係法令や、万一の場合に備えて、行政不服審査法や行政事件訴訟法などについての知識も身につけておく必要がありましょう。そのための勉強をなさっては如何ですか。業者が知識を身につけておけば、行政側も無茶なことは出来なくなるものです。ご希望があれば、テーマを決めて、事務局まで申し込んで下さい。費用は、資料代、講師1名分の旅費、宿泊する必要があれば宿泊費、それに若干の日当を負担していただくことになります。申し込みは下記にお願いします。
〒340 草加市松原3丁目23-405 (電話)0489・43・7944
清掃問題研究会事務局