清研時報

1987年7月号

改正された合理化特別措置法を被害救済の生きた法律とするために
  1. 今のままでは免税措置は受けられぬ下水道の整備等に伴う転廃業助成金
  2. 転廃業助成金にかかる課税の特例
  3. 転廃業助成金等を指定する大蔵省告示
  4. 免税措置を受けるには、どうしたらよいか
  5. 今、業界がやるべきことは、何か
今のままでは免税措置は受けられぬ下水道の整備等に伴う転廃業助成金
  • 下水道の整備等に伴って転廃業を余儀なくされる人たちに交付される助成金には、租税特別措置法による免税の措置は受けられないそうですね。
  • ええ、今のままでは受けられません。
  • 全国の業者は、それを知っているのでしょうか。
  • おそらく、知らないでしょうね。実は、私も、昭和60年12月27日に合理化特別措置法の一部が改正されて、市町村が定める合理化事業計画の中に、『下水道の整備等により業務の縮小又は廃止を余儀なくされる一般廃棄物処理業等を行う者に対する資金上の措置に関する事項』が加えられたいきさつから、下水道の整備等に伴って転廃業を余儀なくされる人たちに交付される助成金については、租税特別措置法による免税の措置が講ぜられているものとばかり思っていましたが、とんだ思い違いでした。
  • どうして、それに気付いたのですか。
  • 鹿児島県の奄美大島に宇検村という人口2,550人ばかりの村があります。今年の3月、その宇検村に浄化槽清掃業の新規許可申請問題が発生し、頼まれて出かけて行った帰りに、名瀬市のホテルに一泊したところ、昨年、下水道の整備に伴って廃業を余儀なくされた名瀬市の3人のうちの2人が税理士といっしょに訪ねて来て、転廃業助成金に対する税金について相談を受けました。
    この名瀬市の補償問題については、昭和60年1月11日、鹿児島県環境整備事業協同組合の小河原敏男、栫井利道両氏とともに名瀬市役所を訪ね、助役遠目塚助三氏、市民部長寿山一徳氏に会い、補償に関する資料を渡して善処してもらうように申し入れ、次いで同年10月 8 日、再び小河原敏男氏とともに名瀬市役所を訪ね、当時の市長大津鐵治氏に会ったところ、「下水道の整備に伴って影響を受けている業者に対してどう処置するかについては、協議会をつくり、代替業務にはどんなものがあるか、なければ補償をどうするかについて検討しているので、しばらく待ってもらいたい。」ということだったので、いつまで待てばよいのか、明確にしてもらいたい、と申し入れ、「12月いっぱいにはメドをつける」という確約を得たので、そのことを覚書として文書にしたためてもらいましたが、その後の折衝には立ち合っていなかったので、3人の業者が助成金の交付を受けたときのことは、後になって話を聞いて承知したような次第で、交付された助成金についても、およその金額しか知りませんでした。
    2人がホテルに訪ねてきたのは3月14日、土曜日のことでした。16日には確定申告をしなければならないというので、せっぱつまった様子でしたが、私はそんな相談を受けようなどとは予期していませんでしたし、関係資料も持参しておらず、15日には帰宅せねばならぬ事情もありましたので、その2人を伴って、名瀬市長豊永光氏に面会を求め、環境保全議員連盟の合理化特別措置法改正検討小委員会の委員長として改正法律案をまとめられた植木光教参議院議員が、「交付金を受けたときに租税特別措置法によって免税を受けるという措置がなかったら、せっかく交付金を受けても、その交付金は十分に生きてこないわけで、免税措置については租税特別措置法によって対処するという約束を大蔵省から得ている」と説明しておられたことを紹介し、市長から税務署長に、課税については十分に配慮してもらうように申し入れていただきたいとお願いするとともに、その2人といっしょに訪ねてきていた税理士に、植木光教委員長の発言内容を掲載した昭和59年6月20日付の環境保全タイムズをファクシミリで送り、それを税務署に持参して交渉に当たってもらうことにしました。
  • 植木先生の説明の内容はどんなものだったか、紹介してくれませんか。
  • そうですね。ここに日本環境保全協会の昭和59年度の通常総会の席上で、合理化特別措置法改正検討小委員会の委員長として説明された内容を掲載した環境保全タイムズがありますから、紹介することにしましょう。

    通常総会の冒頭に、皆様方にご挨拶を申し上げ、法改正の現状についてご説明をする機会をお与え下さいまして感謝申し上げます。
    今もお話がございましたように、皆様方の環境は極めて厳しいものがございます。昭和38年に下水道整備5カ年計画が始まり、爾来こんにちに至るまで下水道の整備が全国各地において展開されている訳でございます。従いまして、一般廃棄物処理業者である皆様方のお仕事が、それにより非常に大きな圧力を受け、合理化を迫られるというような時代が続いて参りました。私どもは、皆様方の遭遇しておられる危機を、なんとかして国又は地方公共団体の力で守り抜いて参りたいという趣旨のもとに、昭和50年に、ご承知の『下水道の整備等に伴う一般廃棄物処理業等の合理化に関する特別措置法』を、議員立法をもって制定いたしました。下水道整備等に伴う合理化事業が、皆様方自身の力と共に、この法律が担保して、円滑に行われるようにという願いをもって、また、この法律でやれるという自信をもって制定したのですけれども、ご存知の通り、この法律によります市町村の対応の仕方というものが、所期の目的を達成するに至らずに今日に至りました。
    もとより、それぞれの市町村において、独自に交付金等の交付をはじめ、いろいろな措置は講じられて参りました。法律があるが故に、それが1つの大きな役割を果たして、市町村の対応となってきているということも事実でございます。けれども、この法律で合理化のための計画が立てられ、それが都道府県で承認を受け、そして国も加わった立場でこの法律が運営されるという実効があがらないというような状況になって参った訳でございます。そこで小林会長はじめ役員の皆様方、又は業界の皆様方の強いご陳情をいただき、これではいけないということで、昭和56年に検討小委員会が設けられ、斎藤十朗参議院議員が委員長となりまして、私ども委員が安井代表の指導のもとに、いろいろ何回も協議を重ねてきたのでございます。しかし、皆様方にご満足いただけるような成案を得るに至らないうちに、斎藤委員長が参議院の国会対策委員長になられ、また後任の委員長として活躍をしていただいておりました越智衆議院議員が、昨年の選挙において落選されるという大変悲しいことがあった訳であります。従いまして私が委員長に指名され、精力的に厚生省、大蔵省、自治省その他関係省庁と連絡に当たり、協議を続けながら小委員会を開催しまして、このたび改正案をまとめるに至ったのでございます。
    すでに皆様方ご承知かと思いますけれども、この改正の要点は申し上げるまでもなく第3条の改正でございます。この改正の趣旨、理由でございますけれども、『一般廃棄物処理業等についての合理化事業計画に定めるべき事項に関する規定を整備する必要がある。これがこの法律案を提出する理由である』という理由を付しまして、第3条の第2項中の、適正化に関する事項、これはいろいろありますが、その中で市町村が合理化事業をたてますときに、『下水道の整備等による一般廃棄物処理業等の経営の基礎となる諸条件の変化の見通しに関する事項、下水道の整備等に伴う一般廃棄物処理業等の事業の転換並びに経営の近代化、及び規模の適正化に関する事項、その他厚生省令で定める事項について定めるものとする。』、合理化事業計画は、以上のような事項を決めるということになっているのでございます。一番大事な資金の事項がこの中に欠けておりますために、合理化事業計画をたてるときに、資金上の措置が明確にこの計画の中に打ち出されない。ここに一番の問題があるということに着目いたしまして、先ほど読み上げました第3条第2項中の適正化に関する事項の中に、『下水道の整備等により業務の縮小又は廃止を余儀なくされる一般廃棄物処理業等を行うものに対する資金上の措置に関する事項』を加えることにしたのでございます。いろいろな計画をたてていく中に、業界や業者の皆様方に対する資金上の措置に関する事項を計画の中に入れさせるということによりまして、この計画はいわば魂を入れるということになる訳で、私ども合意を見た次第でございます。
    この点に関しましては、厚生省、通産省に対し、この項目を入れることによって、市町村が資金上の措置に関する事項を計画の中に入れる。そのことによっていろいろ交付金を交付される場合に、この交付金の交付を行うということによって受けられる皆様方の利益というものを充分に認識をし、そして周知徹底させること、各市町村に対して、資金上の措置に関する事項を計画の中に入れるということを、強く行政指導を行うよう要請し、確約を得ました。そして、今日までの実態が先ほど申し上げたようなことでございますので、今までそれぞれの市町村において行われております実態の調査を早急に厚生省が行うこと、そしてそれを受けまして、交付金を皆様がお受けになりましたときには、租税特別措置法によりまして免税を受けるという措置がなかったならば、せっかく交付金をお受けになりましても、その交付金は充分に生きてこない訳でございますので、免税措置については実態調査のうえで、租税特別措置法により対処するという約束を大蔵省から得た次第でございます。
    そして市町村から交付されるものについて、自治省が特別交付税その他の交付税によりまして、市町村を援助するという道も開くということについて、各省庁の合意も得た次第でございます。従いまして、このような改正を行いますならば、本当にこの法律が生きて皆様方が受けなければならない被害に対する救済策がとられるということになる訳で、この点につきましてこの成案を得たことをここにご報告申し上げますと共に、この改正案は先般の小委員会において了承を受けますと共に、直ちに自由民主党の社会部会長のもとに提案の趣旨説明も合わせ提出をいたしました。稲垣社会部会長は、これに精力的に取り組むということを、明確に私どもに意志表示をされまして、本日、社会部会長と政務調査会の幹部との間に、この改正案につきまして実質的な協議が行われるということになったのでございます。そして、これを速やかに社会部会、政策審議会、さらに総務会を通過させまして、今国会に提案を行い、成立させるということで私ども対処しておりますので、ここにご報告を申し上げ、皆様方のご支援を申し上げる次第でございます。いろいろな案が何回か出されまして、いろいろな角度から検討を続け、ただいま申し上げました改正案によって、皆様方に必ずお報いができるという確信を持つに至ったのでございます。
    皆様方はこれまで小林会長を中心に団結して苦難を乗り越えて来られた訳でございますが、どうか、明るい展望を開くということを、私ここではっきりと皆様方にお約束を申し上げ、皆様方の業界が今後発展するよう努力して参りますことを重ねてお誓いをいたしまして、私の挨拶とさせて頂きます。

  • なるほど、下水道の整備等に伴って転廃業を余儀なくされる業者に交付される交付金の免税措置については、大蔵省から租税特別措置法によって対処するという約束を得ていると、はっきり言っておられますね。
  • 環境保全議員連盟の合理化特別措置法改正検討小委員会でまとめられた改正案は、そのまま、昭和60年6月14日、第102回通常国会に自民党から提案されたものの、継続審議となり、同年11月28日、第103回臨時国会に改めて衆議院社会労働委員長から提案され、原案どおり可決、成立したわけですが、法改正検討小委員会の委員長をつとめられた植木参議院議員は、34歳の若さで京都府知事選挙にかつぎ出されたほどの人物で、沖縄開発庁長官や総務長官などを歴任した有力な政治家です。決して、はったりを利かせるような人ではありません。それだけに、下水道の整備等に伴って転廃業を余儀なくされる人たちに交付される転廃業助成金については、租税特別措置法による免税措置がとられているものとばかり思いこんでいました。
  • ところが、免税措置はとられていなかったというわけですね。
  • 全く意外でした。名瀬市長から申し入れを受けた名瀬税務署長は、念のため熊本国税局にも照会したうえで、合理化特別措置法による一般廃棄物処理業者等に対する転廃業助成金については、課税の特例を認める措置はとられていない、と名瀬市長に連絡してきたそうです。また、植木委員長の説明内容を掲載している環境保全タイムズを送っておいた名瀬市の税理士からも、「租税特別措置法第28条の3(転廃業助成金等に係る課税の特例)の規定で、大蔵大臣が指定する補助金等については、事業所得の総収入金額不算入又は一時所得の金額とする軽減措置がとられている。しかしながら、下水道の整備等に伴う一般廃棄物処理業等の合理化に関する特別措置法(50年法律第31号、改正60年)による転廃業助成金は、上記28条の3の規定の適用がない(具体的には大蔵大臣指定の補助金等に該当しない)ため、全額が事業所得又は譲渡所得として、所得税が課税されることになる。したがって、県から厚生省担当部局へ上申のうえ、大蔵省主税局税制1課と協議し、善処して下さるようお願いしてもらいたい。」と、鹿児島県環境整備事業協同組合に連絡してきたとの知らせがありました。
    私は税務に関する専門的な知識はもっていませんので、いったい、どうなっているのかをお聞きしようと思って、植木参議員議員をお訪ねしました。ところが、統一地方選挙を控えて京都の方へ帰っておられて、しばらくは帰京されない様子でしたので、秘書の魚本裕夫氏に、
    1. 下水道の整備等に伴って転廃業を余儀なくされる人たちに交付される転廃業助成金に対する免税措置について、植木先生は、大蔵省の誰と、租税特別措置法によって対処するという約束をしてもらったのか
    2. 大蔵省では、植木先生との約束に基づいて、どのような措置を講じたのか
    3. 大蔵省が、植木先生との約束を実行していないとすれば、約束どおりの措置を講ずるように取り計らってもらうには、どうしたらよいか
    などについて、先生にお尋ねしていただきたい、とお願いしておきました。
  • その結果は、どうでしたか。
  • ご承知のように、統一地方選挙は長期にわたりますし、5月の連休もあり、それが終わっても、植木先生は自民党の両院議員総会長の要職にあって、なかなか多忙な方ですから、しばらくお待ちするほかあるまいと考え、その間に、租税特別措置法に定める『転廃業助成金等に係る課税の特例』について調べてみることにしました。
転廃業助成金にかかる課税の特例
  • 租税特別措置法の規定は、どうなっているのですか。
  • 『転廃業助成金に係る課税の特例』は、個人については第28条の3に、法人については第67条の4に定められています。参考までに、紹介しておきましょう。

    租税特別措置法第28条の3|事業の整備その他の事業活動に関する制限につき、法令の制定、条約その他の国際約束の締結その他これらに準ずるものとして政令で定める行為があったことに伴い、その営む事業の廃止又は転換をしなければならないこととなる個人(以下この条において「廃止業者等」という。)が、その事業の廃止又は転換をすることとなることにより国若しくは地方公共団体の補助金(これに準ずるものを含む。)又は残存事業者等の拠出した補償金で、政令で定めるもの(以下この条において「転廃業助成金等」という。)の交付を受けた場合には、当該転廃業助成金等のうち、その個人の有する当該事業に係る機械その他の減価償却資産の減価をうめるための費用として政令で定めるものに対応する部分(以下この項において「減価補てん金」という。)の金額は、当該減価補てん金の交付を受けた日の属する年分の各種所得の金額の計算上、総収入金額に算入しない。

    2|廃止業者等である個人が転廃業助成金等の交付を受けた場合において、当該転廃業助成金等のうちその営む事業の廃止又は転換を助成するための費用として政令で定めるものに対応する部分(以下この条において「転廃業助成金」という。)の金額の全部又は一部に相当する金額をもってその交付を受けた日の属する年の12月31日までに政令で定める資産の取得(建設及び製作を含む。)又は改良(取りこわし及び除去を含む。)をしたときは、当該転廃業助成金の金額のうち当該資産の取得又は改良に要した金額に相当する金額は、同年分の各種所得の金額の計算上、総収入金額に算入しない。

    3|前項の規定は、同項の個人が交付を受けた転廃業助成金等のうち転廃業助成金の金額の全部又は一部に相当する金額をもってその交付を受けた日の属する年の翌年1月1日からその交付を受けた日後2年を経過する日までの期間(工場等の建設に要する期間が通常2年をこえることその他の政令で定めるやむを得ない事情がある場合には、同年1月1日から政令で定める日までの期間)内に同項に規定する資産の取得又は改良をする見込みであり、かつ、大蔵省令で定めるところにより納税地の所轄税務署長の承認を受けた場合について準用する。

    4|廃止業者等である個人がその交付を受けた転廃業助成金等のうちに転廃業助成金の金額がある場合において、当該転廃業助成金の金額のうち第2項(前項において準用する場合を含む。)の規定により総収入金額に算入しないこととされた金額以外の部分の金額があるときは、当該金額に相当する金額は、その交付を受けた日の属する年分の一時所得に係る収入金額とする。(以下略)

    租税特別措置法第67条の4|事業の整備その他の事業活動に関する制限につき、法令の制定、条約その他の国際約束の締結その他これらに準ずるものとして政令で政令で定める行為があったことに伴い、その営む事業の廃止又は転換をしなければならないこととなる法人(以下この条において「廃止業者等」という。)が、その事業の廃止又は転換をすることとなることにより国若しくは地方公共団体の補助金(これに準ずるものを含む。)又は残存事業者等の拠出した補償金で、政令で定めるもの(以下この条において「転廃業助成金等」という。)の交付を受けた場合において、その交付を受けた日を含む事業年度において当該転廃業助成金等の金額のうち、その法人の有する当該事業に係る機械その他の減価償却資産の減価をうめるための費用として政令で定めるものに対応する部分(以下この項において「減価補てん金」という。)の金額に相当する金額の範囲内で当該減価補てん金に係る機械その他の減価償却資産の帳簿価額を損金経理により減額したときは、その減額した金額に相当する金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。

    2|廃止業者等である法人が転廃業助成金等の交付を受けた場合において、当該転廃業助成金等の金額のうちその営む事業の廃止又は転換を助成するための費用として政令で定めるものに対応する部分(以下この条において「転廃業助成金」という。)の金額の全部又は一部に相当する金額をもって当該交付を受けた日を含む事業年度において固定資産の取得(建設及び製作を含む。)又は改良をし、当該固定資産につきその取得又は改良に充てた転廃業助成金の金額に相当する金額(以下この項において「圧縮限度額」という。)の範囲内でその帳簿価額を損金経理により減額し、又はその帳簿価額を減額することに代えてその圧縮限度額以下の金額を損金経理により引当金勘定に繰り入れる方法により経理したときは、その減額し、又は経理した金額に相当する金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。

    3|廃止業者等である法人が、転廃業助成金等の交付を受けた場合において、その交付を受けた日を含む事業年度の翌事業年度開始の日から交付を受けた日以後2年を経過する日までの期間(工場等の建設に要する期間が通常2年をこえることその他の政令で定めるやむを得ない事情がある場合には、政令で定める期間)内に当該転廃業助成金等の額のうち転廃業助成金の金額(当該交付を受けた日を含む事業年度において当該金額の一部に相当する金額をもって固定資産の取得又は改良をした場合には、当該取得又は改良に充てられた金額を控除した金額)の全部又は一部に相当する金額をもって固定資産の取得又は改良をする見込みであり、かつ、当該交付を受けた日を含む事業年度の確定した決算において当該転廃業助成金の金額のうち固定資産の取得又は改良に充てようとするものの額を特別勘定として経理したときは、その経理した金額に相当する金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。

    4|第2項の規定は、前項の規定の適用を受けた法人が、指定期間内に転廃業助成金等の額のうち転廃業助成金の金額で固定資産の取得又は改良に充てようとするものの全部又は一部に相当する金額をもって固定資産の取得又は改良をした場合について準用する。(以下略)

    この租税特別措置法の規定をうけて、政令で、次のように定めています。

    租税特別措置法施行令第18条の3|法第28条の3第1項に規定する政令で定める行為は、国の施策に基づいて行われる国の行政機関による指導及び国からの資金的援助を受けてその業種に属する事業を営む者の相当数が参加して行うその事業に係る設備の廃棄その他これに類する行為とする。

    2|法第28条の3第1項に規定する政令で定める補助金又は補償金は、同項に規定する個人が法令の規定に基づき国若しくは地方公共団体から交付される補助金その他これに準ずるものとして大蔵大臣が指定する補助金又は同項に規定する残存事業者等の拠出した補償金として大蔵大臣が指定する補償金(以下この条において「補助金等」という。)とする。

    3|法令28条の3第1項に規定するその個人の有する当該事業に係る機械その他の減価償却資産の減価をうめるための費用として政令で定めるものは、補助金等のうち、その交付の目的が機械その他の減価償却資産の減価をうめるための費用に充てるべきものとして大蔵大臣が指定するものとする。

    4|法第28条の3第2項に規定するその営む事業の廃止又は転換を助成するための費用として政令で定めるものは、補助金等のうち、その交付の目的が事業の廃止又は転換を助成するための費用に充てるべきものとして大蔵大臣が指定するものとする。(以下略)

    租税特別措置法施行令第39条の28|法第67条の4第1項に規定する政令で定める行為は、国の施策に基づいて行われる国の行政機関による指導および国からの資金的援助を受けてその業種に属する事業を営む者の相当数が参加して行うその事業に係る設備の廃棄その他これに類する行為とする。

    2|法第67条の4第1項に規定する政令で定める補助金又は補償金は、同項に規定する法人が法令の規定に基づき国若しくは地方公共団体から交付される補助金その他これに準ずるものとして大蔵大臣が指定する補助金又は同項に規定する残存事業者等の拠出した補償金として大蔵大臣が指定する補償金(以下この条において「補助金等」という。)とする。

    3|法第67条の4第1項に規定するその法人の有する当該事業に係る機械その他の減価償却資産の減価をうめるための費用として政令で定めるものは、補助金等のうち、その交付の目的が機械その他の減価償却資産の減価をうめるための費用に充てるべきものとして大蔵大臣が指定するものとする。

    4|法第67条の4第2項に規定するその営む事業の廃止又は転換を助成するための費用として政令で定めるものは、補助金等のうち、その交付の目的が事業の廃止又は転換を助成するための費用に充てるべきものとして大蔵大臣が指定するものとする。(以下略)

  • なるほど、個人の場合も、法人の場合も、法令の規定に基づいて国や地方公共団体から交付された補助金や、残存事業者等が拠出した補償金であっても、大蔵大臣が指定したものでなければ、租税特別措置法による免税措置は受けられないことになっていますね。
  • ええ、法文にそのことが明記されています。
  • 名瀬市の税理士から連絡してきたのは、市町村が下水道の整備等に伴って転廃業を余儀なくされた人たちに交付した助成金については、大蔵大臣の指定を受けていないから、租税特別措置法による『課税の特例』の規定は適用されないということですね。
  • そうです。そこで、この点がどうなっているかを聞くために、大蔵省主税局税制第1課の法人税第2係長・内藤譲氏を訪ねました。
  • どんな話でしたか。
  • 下水道の整備等に伴う一般廃棄物処理業等の合理化に関する特別措置法に基づいて、市町村が交付する転廃業助成金に対する『課税の特例』の適用については、厚生省からも、どこからも申し入れを受けたことはなく、大蔵省告示は出していない、ということでした。そして、現在までに出ている大蔵省告示を見せてもらいましたが、云われるとおり、合理化特別措置法に関するものはありませんでした。
転廃業助成金等を指定する大蔵省告示
  • その大蔵省告示には、どんなものがありますか。
  • 大蔵省主税局税制第1課監修の≪法人税法規集≫に、租税特別措置法に規定する転廃業助成金等を指定した大蔵省告示が列挙されていますが、そのうちのいくつかを紹介しましょう。

    大蔵省告示第12号(昭和58年2月12日)

    租税特別措置法施行令第18条の3第2項から第4項まで及び第39条の24第2項から第4項までの規定に基づき、租税特別措置法第28条の3第1項及び第67条の4第1項に規定する転廃業助成金等及び減価補てん金並びに同法第28条の3第2項及び第67条の4第2項に規定する転廃業助成金を次のように指定し、個人にあっては昭和57年分以後の所得税、法人にあっては昭和57年12月22日以後に終了する事業年度分の法人税について適用する。

    1. 租税特別措置法第28条の3第1項及び第67条の4第1項に規定する転廃業助成金等は、日本撚糸工業組合連合会が、昭和57年4月1日から昭和58年3月31日までの間において、中小企業事業団法の規定に基づく資金の貸付けを受けて行う設備共同廃棄事業として仮より機共同廃棄事業を実施することに伴い、連合会から交付される設備廃棄助成金とする。
    2. 法第28条の3第1項及び第67条の4第1項に規定する減価補てん金は、前項に規定する設備廃棄助成金のうち廃棄事業により廃棄をした機械設備の当該廃棄の直前における償却後の取得価額又は帳簿価額に相当する部分の金額とする。
    3. 法第28条の3第2項及び第67条の4第2項に規定する転廃業助成金は、第1項に規定する設備廃棄助成金のうち前項に規定する部分以外の部分の金額とする。

    大蔵省告示第119号(昭和58年10月29日)

    租税特別措置法施行令第39条の26第2項及び第4項の規定に基づき、租税特別措置法第67条の4第1項に規定する転廃業助成金等及び同条第2項に規定する転廃業助成金を次のように指定し、法人の昭和58年9月10日以後に終了する事業年度分の法人税について適用する。

    1. 租税特別措置法第67条の4第1項に規定する転廃業助成金等は、一般旅客定期航路事業を営む者が本州四国連絡橋の建設に伴う一般旅客定期航路事業等に関する特別措置法第5条第1項に規定する実施計画に従って行う一般旅客定期航路事業の事業規模の縮小等(因島大橋の供用に伴い行われるものに限る。)に伴い、本州四国連絡橋公団から交付される同法第10条に規定する一般旅客定期航路事業廃止等交付金とする。
    2. 法第67条の4第2項に規定する転廃業助成金は、前項に規定する一般旅客定期航路事業廃止等交付金の金額とする。

    大蔵省告示第68号(昭和61年4月9日)

    租税特別措置法施行令第18条の3第2項から第4項まで及び第39条の27第2項から第4項までの規定に基づき、租税特別措置法第28条の3第1項及び第67条の4第1項に規定する転廃業助成金等及び減価補てん金並びに同法第28条の3第2項及び第67条の4第2項に規定する転廃業助成金を次のように指定し、個人にあっては昭和61年分以後の所得税、法人にあっては昭和61年1月1日以後に終了する事業年度分の法人税について適用する。

    • 第1条|(省略。さけ・ますはえなわ漁業等の不要漁船処理対策事業に係る転廃業助成金等)
    • 第2条|(省略。近海かつお・まぐろ漁業用漁船の雙数の縮減に係る転廃業助成金等)
    • 第3条|(省略。かに・つぶ及びえび漁業減船漁業者救済に係る転廃業助成金等)
    • 第4条|(省略。清酒製造業の整備合理化事業に係る転廃業助成金等)
免税措置を受けるには、どうしたらよいか
  • 植木先生が、下水道の整備等に伴って転廃業を余儀なくされる人たちに交付される交付金の免税措置については、大蔵省から租税特別措置法によって対処するという約束を得た、と云われた話は、どうなったのでしょうか。
  • そのことについて、魚本秘書から1度電話をもらっていましたが、直接お話を聞こうと思って、5月12日に植木先生を議員会館に訪ねました。その日もお忙しい様子でしたので、「当時の主税局の課長に話をしておいた」という点を確認するだけにして、その足で、大蔵省主税局税制第1課を訪ねました。
  • 当時の課長が、いまもそのまま課長をしているのですか。
  • さあ、どうですかね。あいにく課長は不在でしたので、先日もお会いした法人税第2係長の内藤譲氏に再び面会を求めましたが、当時の課長が誰であったかを詮索(せんさく)することはしませんでした。
  • 何故ですか。
  • おそらく、当時の主税局税制第 1 課長は、植木先生の話を聞いて、合理化特別措置法の一部を改正する法律が成立して、厚生省から正式に申し入れがあれば、租税特別措置法によって対処するようにしましょう、と約束したのでしょうが、合理化特別措置法の一部を改正する法律は成立したものの、厚生省から何も云ってこないので、そのままになっているのに違いない、と考えたからです。内藤係長も、同じような見解でした。
  • そうすると、租税特別措置法による免税措置がとられていないのは、植木先生の責任じゃありませんね。
  • もちろん、そうですよ。植木先生は環境保全議員連盟の合理化特別措置法改正検討小委員会の委員長として、関係各省庁の意向を打診しながら改正法律案をまとめられましたが、それを自民党の社会部会長のもとに提出し、当時の自民党社会部会長稲垣実男衆議院議員外4名が提出者となって第102回国会に提案したものです。継続審議となったため、改めて第103回国会で衆議院社会労働委員長提出の法律案として審議され、原案どおり可決、成立したいきさつから考えて、改正法律案を自民党の社会部会長のもとに提出された時点で、植木先生の手から離れていたものとみるべきでしょうね。
  • では、責任は誰にあることになりますか。
  • 責任は業界が自ら負うべきものです。せっかく植木先生が、ちゃんと下話をしておいて下さったのですから、合理化特別措置法の一部を改正する法律が成立したところで、息を抜かずに、環境保全議員連盟の先生方にお願いして、転廃業助成金に対する課税の特例について、厚生省から正式に大蔵省に申し入れてもらうようにすべきでした。業界が手をこまねいていては、環境保全議員連盟の先生方も動いてはくれませんよ。
  • そうですね。合理化特別措置法の一部を改正する法律を成立させるためには、環境保全協会と環整連が協力して運動を推進したのですから、もう一度スクラムを組み直して、運動を展開する必要がありますね。
  • 幸い、厚生大臣は、環境保全議員連盟・合理化特別措置法改正検討小委員会の最初の委員長をつとめられた斎藤十朗先生です。業者が団結して真剣に陳情すれば、きっと期待に応えて下さる筈ですよ。
今、業界がやるべきことは、何か
  • 植木先生は、「市町村から交付金として交付されるものについて、自治省が特別交付税その他の交付税によって市町村を援助するという道を開くということを各省庁の間で合意を得ている」とも云っておられますので、これについても、具体化を急いでもらうようにお願いする必要がありますね。
  • そのとおりです。そのほかにも、今やらねばならぬことがあります。
    そもそも合理化特別措置法は、日本環境保全協会の働きかけにより、環境保全議員連盟による議員立法として制定されたものですが、植木先生も述懐されたように、制定された当時は、「下水道整備等に伴う合理化事業が、業者自身の力とともに、この法律が担保して、円滑に行われるようにという願いをもって、また、この法律でやれるという自信をもって制定」されたものですが、「この法律による市町村の対応の仕方は所期の目的を達成するに至らず今日に至っている」有様です。
    合理化特別措置法改正検討小委員会では、その原因を検討し、「法第3条第2項の市町村が定める合理化事業計画の中に一番大事な資金の事項が欠けていることに着目して、資金上の措置に関する事項を計画の中に入れさせるように改める」こととし、植木先生は委員長として、厚生省に対し、「交付金の交付を受ける業者の利益というものを十分に認識し、周知徹底させること、各市町村に対して、資金上の措置に関する事項を計画の中に入れるということを、強く行政指導を行うよう要請し、確約を得」ておられるわけですから、この点についても、厚生省に約束を実行してもらうように陳情すべきでしょう。
  • そうですね。
  • 植木先生の言葉どおり、厚生省では、合理化特別措置法の一部が改正された直後、昭和61年1月13日付衛環第2号・生活衛生局水道環境部長通知を出して、市町村が定める合理化事業計画の中に、業務の縮小又は廃止を余儀なくされる業者に対する資金上の措置に関する事項を加えるように指示しています。これは、厚生省が、下水道の整備等に伴って転廃業を余儀なくされる業者に対して、市町村が転廃業助成金を交付するのは当然のことだと認識していることを証明するものです。
    ところが、この部長通知が出た後、同年10月1日に発行された厚生省水道環境部編集の≪廃棄物処理法の解説≫第6版では、「下水道の供用開始等の事情により、許可を受けた者の従来の業務量が減少し、又は、許可に付された期限の到来のため再申請した者に対して市町村長が不許可処分を行ったとしても、当該市町村は、当該業者に対して、補償の責を負うものではない。」と、以前からの解説の内容を改めていません。これは、明らかに、先の水道環境部長通知を骨抜きにするものです。これでは、せっかく改正された合理化特別措置法が、下水道の整備等に伴って被害を蒙る業者たちを救済するための生きた法律とはなりません。業界が一致団結し、環境保全議員連盟の先生方にお願いして、ぜひともこの解説の内容を改めてもらう必要があります。

次号では、真剣に合理化事業計画に取り組んでいる某市の担当課長との対談内容を収録します。