清研時報

1988年1月号

裁量権の範囲を逸脱して賠償金を支払わされた自治体の実例~神奈川県平塚市の場合~
  1. 東京高等裁判所(差戻審)の判決理由
  1. 浄化槽の意義、法的規制、厚生省環境衛生局長通知の趣旨
  2. 本件の不許可処分に至る経過
  3. 本件の不許可処分の実情
  4. 不許可理由について個別的検討
  5. 結論
東京高等裁判所(差戻審)の判決理由
  • 前回は、委託の基準を無視して、受託者の資格をもたない者に委託し、おまけに、前町長が約束していたその約束を反故(ほご)にして、既存業者を廃業させてしまったために、賠償金を支払わされた宮崎県東臼杵郡の3北町の事例について紹介してもらいましたが、今回は、市長が裁量権の範囲を逸脱して、既存業者の申請を不許可処分にしたため、7,500万円の賠償金を支払わされた事例について紹介してもらう約束でしたね。
  • その事件は、神奈川県平塚市で発生しました。
    清掃法が施行されて1年9か月ばかり経ったころ、厚生省が、愛知県衛生部長からの照会に対して、し尿浄化槽の清掃と槽内汚物の汲み取りを業として行うには、清掃法第15条に基づく市町村長の許可は必要でないと回答し、その照会と回答を併記して、公衆衛生局環境衛生課長名で各都道府県衛生部長に宛てて通知したため、し尿浄化槽の清掃と槽内汚物の取扱いを業として行う者はすべて無許可で、自由に、操業していたことがあります。これは環境衛生課長の重大なミスによるものですが、そのことについては、いずれ改めて解説することにして、ここでは触れずにおきましょう。
    厚生省では、6年後に、環境衛生局長通知をもって、その課長通知を廃止し、し尿浄化槽の清掃と槽内汚物の取扱いを業として行う者は市町村長の許可を必要とすることに改め、昭和38年1月1日から実施することにしました。事件は、それに関連して発生したものです。
    神奈川県平塚市で、以前からし尿浄化槽の清掃と槽内汚物の取扱業に従事してきた奥山大次郎氏が、みずから代表取締役となって湘南設備興業有限会社を設立し、会社名義で、平塚市長に対して浄化槽内汚物取扱業の許可申請をしたところ、不許可処分となったため、その不許可処分の取り消しを求めて提訴した事件で、最高裁判所で2度まで審理した結果、平塚市長がなした不許可処分には裁量権行使の正当な範囲を逸脱した違法があるとして、不許可処分を取消されることになりました。そのあげく7,500万円の損害賠償金を支払う羽目となったわけです。
  • そうです。横浜地方裁判所は、湘南設備興業有限会社から出された不許可処分取消請求を棄却しましたが、東京高等裁判所は、平塚市長が不許可にしたのは裁量権の濫用に当たるとして、不許可処分を取り消す決定をしました。そのため、平塚市長が上告し、最高裁判所では、平塚市長が不許可処分をした事由が真実であると認められるかぎり、裁量権の範囲を逸脱した違法があるものと断ずることはできないとして、原判決を破棄し、さらに審理をつくさせるため東京高等裁判所に差し戻しました。そこで、東京高等裁判所では、上告審の判決をうけて、不許可事由の存否に関する審理をしなおした結果、平塚市長のあげる不許可事由については、全く事実の裏づけを欠くか、技術的に容易に防止することができる事柄ばかりであり、平塚市長がなした不許可処分には裁量権行使の正当な範囲を逸脱した違法があるとして、前回と同じように、不許可処分を取り消す決定をしました。
    平塚市長は再び上告しましたが、最高裁判所は、昭和53年3月31日、原判決に所論の違法はないとして上告を棄却し、15年に及ぶ審理は湘南設備興業有限会社の全面的な勝訴となって終わりました。
  • ひとくちに15年と云いますが、奥山大次郎さんがなめた苦労は並大抵ではなかったでしょうね。
  • おそらく想像を絶するご苦労があったでしょう。しかし、奥山氏がその苦労に耐えたおかげで、貴重な判例を遺してくれました。
    清掃法は改正されて廃棄物処理法となり、浄化槽法の施行を見るに至っていますが、浄化槽の清掃を業として行うにも、浄化槽汚泥の収集、運搬、処分を業として行うにも、市町村長の許可を必要とすることに変わりはなく、今後とも似たような事件が起こる余地はあり得ますから、差戻審の判決理由と、これを是認した最高裁判所の判決理由を紹介することは決して無意味ではありますまい。差戻審の判決は、昭和51年3月30日、最高裁判所第14民事部で言い渡されました。

    一、

    本件の許可申請と不許可処分の存在湘南設備興業有限会社(代表者代表取締役奥山大次郎)が、昭和38年1月8日、平塚市長(加藤一太郎)に対し、清掃法15条1項にもとづき、平塚市の特別清掃地域における浄化槽内汚物の収集、清掃を目的とする汚物取扱業の許可申請をしたところ、平塚市長は、昭和38年1月12日、右申請を不許可にする旨の処分をなし、同月14日到達の書面でこれを湘南設備興業有限会社に通知したこと、湘南設備興業有限会社が右許可申請をしたのは、それまでは事実上清掃法による汚物として取り扱われていなかった浄化槽汚物につき、昭和37年5月12日付厚生省環境衛生局長通知(環発第162号)により、これを清掃法上の汚物として取り扱い、特別清掃区域においてその収集、清掃を業としてするには市町村長の許可を必要とすることに改められたことによること、以上の事実は当事者間に争いがない。

    ニ、

    不許可処分の裁量性右のように、特別清掃地域における浄化槽内汚物の収集、清掃については、昭和37年5月12日の行政通達によってはじめて、これを業として取り扱うには市町村長の許可を得なければならないことに改められたが、もともと、特別清掃地域においては、浄化槽内汚物であると生し尿であるとを問わず、汚物を一定の計画に従って衛生的に収集、処分することは市町村の責務とされているのであって(清掃法6条、地方自治法2条3項7号、同法別表第2の11参照)、ただこれらすべてを市町村がみずから処理することは実際上不可能であることから、許可を与えた汚物取扱業者をして右市町村の事務を代行させることにより、市町村がみずから処理したのと同様の効果を確保しようとしたものである。したがって、市町村長が右許可を与えるかどうかは、清掃法の目的と当該市町村の清掃計画とに照らし、市町村がその責務である汚物処理の事務を円滑完全に遂行するのに必要適切であるかどうかという観点に立ってこれを決すべきものであり、その意味において市町村長の裁量に任されているものと解することができる。このことは、本件を差戻した最高裁判決の示すところであって、当裁判所も基本的にこれに従う。

    三、

    裁量権の濫用の有無湘南設備興業有限会社は、本件の不許可処分は取り消されるべきであるとして種々の取消原因を主張するが、以下では、本件の不許可処分につき平塚市長が主張する不許可理由に焦点をあわせながら、その裁量権の濫用の有無について検討する。平塚市長は、本件の不許可処分について、平塚市における汚物の収集処理の方針、実施状況、既存各業者の能力、処理場の現況に照らし、湘南設備興業有限会社からの汚物取扱業の許可申請を審査した結果、不適格と判断して許可しなかったものであると主張し、不許可の具体的理由としては、
    1. 本件の許可申請当時、平塚市では同市の人口を勘案して市営の汚物清掃作業所の拡張工事を施行中であったが、湘南設備興業有限会社は平塚市以外の汚物の収集をも行っていたため、右申請を許可すると他地域の汚物が右作業所に持ち込まれ市の処理作業に支障を来す危険性がある
    2. 右作業所完成までの事情として、湘南設備興業有限会社は平塚市内に汚物処理場を有していないため、汚物処理の状況を十分に調査、監督することができない
    3. 平塚市ではすでに許可を受けた汚物取扱業者が6人おり、浄化槽内汚物の収集、清掃もこれらの業者に取り扱わせればそれで十分である。新規業者を加えると、かえって無用の摩擦を生ずるおそれがある
    4. 湘南設備興業有限会社は浄化槽内汚物以外の汚物の取扱いについて許可を申請しないが、許可なしにこれらの収集を行っても汚物としての認識ができないので、その営業に対する監督が困難である
    ことの4点を挙げている。
    ところで、右不許可理由が真実とみとめられるかどうかについての判断が当審におけるもっとも重要な課題をなすことは、本件を差戻した最高裁判決の趣旨に照らしてあきらかであるが、本件の不許可処分の重要性と判断の便宜とにかんがみ、まず、浄化槽の意義、法的規制、前記厚生省環境衛生局長通知の趣旨、本件不許可処分の経過および実情について概観し、その後で不許可理由についての個別的な検討を加えることとする。

(1)浄化槽の意義、法的規制、厚生省環境衛生局長通知の趣旨
≪証拠略≫を総合すると、つぎのとおり認めることができる。

すなわち、浄化槽というのは、その方式には種々のものがあるが、し尿を腐敗槽、酸化槽、消毒槽などに仕切られた槽の中を通過させながら、微生物の働きによってこれを分解、酸化するとともに、固形物を沈澱、濾過させたうえで、薬品で消毒して放流水を排水溝等に流す設備である。浄化槽内汚物の収集、清掃のうち、汚物の収集は、清掃のために注入した洗浄水とともにバキュームカーなどで汲み取り処理場まで運搬するものであって生し尿の汲み取りと同じ作業で足りるが、浄化槽内部の清掃については、生し尿の汲み取りとは著しく異なり、種々の方式をもつ浄化槽の構造の理解がなければならないのは勿論、微生物を殺さないようにするための知識、経験が必要であり、さらに浄化槽内部を洗浄するための洗浄器や浄化機能を検査するための顕微鏡その他の器材を必要とする。

本件の不許可処分後である昭和40年政令第364号によって付加された清掃法施行令2条の2は、市町村が汚物の収集、処分を市町村以外の者に委託する場合の基準として、「受託者が受託業務を遂行するに足りる設備、器材、人員及び財政的基礎を有し、かつ、受託しようとする業務の実施に関し相当の経験を有する者であること」を掲げたが、これは主として右のような浄化槽内汚物の収集、清掃の特質を念頭に置いたものとみることができる。しかるに、それ以前の段階では、浄化槽の維持管理については、清掃法施行規則および平塚市の場合は神奈川県規則たる同法施行細則によって、放流水は常時薬品で消毒し、年1回以上は保健所長に届出たうえで腐敗槽、酸化槽、消毒槽の清掃を行い、かつ、放流水の検査をうけることなどが浄化槽の管理者に義務づけられていたが、浄化槽内汚物の収集については、生し尿の汲み取りの場合とは異なり、市町村の責務には属しないとの行政解釈がとられ(昭和31年3月31日付衛環第28号・厚生省公衆衛生局環境衛生部環境衛生課長通知、前記昭和37年の通知によって廃止)、したがって、これを収集しあるいは浄化槽の清掃を業として行う者に、特別の資格ないし市町村長の許可は必要でないとされていた。そのため、平塚市では、生し尿の汲み取りについては、6人の業者が市長の許可を受けてこれに従事し、昭和35年9月以降はその指導のもとに担当地区制をとり、営業区域に競合を生じないようにするなどの調整がはかられていたが、浄化槽内汚物の収集、清掃については、設置者の責任と自由に任されており、右汲み取り業者の中にもこれを扱う者がないではなかったものの、これを専門に扱う平塚市外の業者も入ってきており、しかも、生し尿の汲み取りのような担当地区の定めがないため、各業者の営業区域も一定せず、まして市長の指導、監督が及ぶこともなく、すべてが設置者と業者との個別的な取引に委ねられていた。

ところが、その後における浄化槽の急速な普及増加に伴い、槽内汚物の処分(収集、清掃)の如何によっては汚でいを街に流し、臭気を発散させ、病菌を伝播させる等生活環境を著しく汚染するおそれが生ずるに至り、環境衛生上その処分を設置者のみの責任に任せておくことが適当でなくなったため、厚生省は、従来の行政解釈を改め、前記のとおり昭和37年5月12日付で環境衛生局長通知により、都道府県知事を通じ市町村長にあてて、
  1. 浄化槽内汚物は、清掃法6条の規定にもとづき市町村が収集義務を有する汚物とする。
  2. 浄化槽内汚物の収集(清掃を含む)を業として行う者は、清掃法15条1項の規定により市町村長の許可を必要とする。
  3. 市町村の収集計画、汚物取扱業者の手続、収集処分等の諸準備の関係上、右の実施期日は昭和38年1月1日からとする。
旨を通知した。右通知が発せられた結果、新たに浄化槽内汚物の収集、清掃の業務を開始する者はもとより、従来これを業としていた者も、市町村長の許可を得なければ営業することができなくなったが、右通知は、それ以上に、従来許可をうけて生し尿の汲み取りをしていた業者につき、新たな許可を要することなく当然に浄化槽内汚物の収集、清掃ができるとか、これらの汲み取り業者には当然に許可を与えるべきであるというものでないことは、右通知が発せられた理由および(ハ)で当該市町村の汚物収集計画等を踏まえた汚物取扱業者の許可手続その他の準備期間を予定していることによってあきらかであった。したがって、平塚市長が、右通知は浄化槽内汚物を生し尿と同様に扱うことにしたのであるから、すでに生し尿の汲み取りの許可をうけていた業者は、特別の許可を要することなく当然に浄化槽内汚物の収集、清掃ができるようになったと主張するのは、右通知の趣旨を誤解したことによるものといわなければならない。

なお、市町村が清掃法6条により汚物の収集義務を負うのは、特別清掃地域の指定をうけた地区のみであって、平塚市の場合には国鉄平塚駅を中心とした旧市街と周辺地区の一部がこれに該当し、その他の地区は特別清掃地域から除外されており、右通知の適用はない。以上のとおり認めることができ、≪証拠略≫中、従前から浄化槽内汚物の収集、清掃も生し尿の汲み取り業者がほとんど全部をやっていたもので、許可をうけた6業者以外に浄化槽の清掃をやっていた者はない旨を述べた部分は信用できず、また、≪証拠略≫中、浄化槽の清掃においても、暗黙のうちに従来からの得意先とか担当区域とかを業者同士で決めあって、よその得意は荒さないという気持ちであったとの部分は、前記認定の妨げとはならない。
(2)本件の不許可処分に至る経過
≪証拠略≫を総合すると、つぎの事実を認めることができる。

すなわち、前記厚生省環境衛生局長通知をうけた平塚市長は、右通知を実施するための準備が間にあわないことを理由にして、平塚市を含む湘南11市連絡協議会の議を経たうえで厚生省に対し実施の延期方を申し入れたが、延期実現の見込みが少ないことを知り、急遽平塚市として通知にあるとおり昭和38年1月1日から実施に移すことになった。そこで、右延期申入れの成り行きを見守っていた湘南設備興業有限会社は、昭和38年1月8日、平塚市長に対し、平塚市清掃条例(昭和30年3月29日条例第5号)12条にもとづき、湘南設備興業有限会社の名称、所在地、代表者の氏名、営業所の所在地、汚物の処理場、作業用具の種類、数量、従業員数、作業計画、作業能力、取扱料金その他の必要事項を記載し、取扱汚物ならびに収集、運搬および処分の別については、「し尿浄化槽汚物の収集、運搬、し尿浄化槽の清掃および管理」と明示した書面を提出し、汚物取扱業の許可申請をした。

右条例は、平塚市が特別清掃地域における汚物の処理について清掃法の施行細則を定めたもので、清掃法15条1項による汚物取扱業の許可申請事項を規定した12条は、前記通知が実施に移された後の昭和38年4月1日から施行された新たな条例においても変化がなく、これらによれば、平塚市では、汚物取扱業の許可をその取り扱うべき汚物の種類によって、または収集、運搬、処分のいかんによって別異に扱う場合のあることを予定していたとみることができるものであり、湘南設備興業有限会社の許可申請は、右のような条例の定めにも適合するものであった。
ところが、平塚市長は、右許可申請がなされた日の4日後である昭和38年1月12日付をもって、
  1. 平塚市内の浄化槽は約600ケ所と推定されるが、すでに許可をうけた6業者が従来も浄化槽の清掃を行ってきているので、これらの業者および従業員にさらに浄化槽の清掃に関する教育を徹底するとともに、清掃および検査に必要な器材を整備させれば、右浄化槽の清掃に支障はない。
  2. 生し尿と浄化槽の汚物とは同一の取扱いで処理され、作業上にも著しい差異がないので、浄化槽の清掃のみを取り扱う業者を許可することは、し尿処理の秩序、形態を乱すおそれがある。
  3. 湘南設備興業有限会社は平塚市以外の地区の浄化槽の清掃を行っているので、他市町の汚物が平塚市営の清掃作業所に搬入される危険がある。
ことの3点を理由として右許可申請を不許可にすることに決定し、前記のとおり同年1月14日到達の書面でこれを湘南設備興業有限会社に通知するとともに、同月19日付で、平塚市内の浄化槽設置者にあてて、厚生省の通知により浄化槽に関する扱いが変わったとして、浄化槽内汚物を生し尿と同じ取扱いとする、浄化槽内汚物の収集(清掃を含む)を業として行う者は市町村長の許可を必要とする、右の実施期日は昭和38年1月1日とする旨を記載し、かつ、平塚市において浄化槽内汚物の収集(清掃を含む)を業とすることを許可してある者として、生し尿の汲み取りの許可を与えている6業者の名称を記載した書面を作成して配付した。
(3)本件の不許可処分に至る経過

(一)

右にみたように、平塚市長は、湘南設備興業有限会社からなされた汚物取扱業の許可申請に対して3点の理由を挙げて不許可処分にしたが(ただし、右不許可理由は内部的なもので、平塚市長が本訴で主張しているのとは範囲を異にしている)、≪証拠略≫を総合すると、右に記載した不許可の理由は、具体的な調査、検討を経ることなく単に不許可にするための理由として考え出されたにすぎないものであって、平塚市長が不許可の処分をした実際の理由は、むしろ、つぎのとおりであることが認められるのである。
すなわち、平塚市では、当時、汚物の収集、処分に関する市の責任体制を確立することを目的として、市営の清掃作業所の増設を計画するとともに、昭和37年9月15日に実施した便所調査にもとづき、生し尿の汲み取り料金の支払いを現金払いから納額告知書の方法(切符制)にきりかえることにし、かつ、許可を得ている既存の汲み取り業者に対しては、右便所調査で判明した便所の数(業者が平塚市に申告しているものより7,000世帯多かった)に対応すべく器材や人員を整備するよう指示し、その態勢作りが進行中であった。しかし、右の施策は、前記厚生省環境衛生局長通知とは関係なく、それが発せられるよりも以前から行われていたものであって、生し尿の汲み取りと浄化槽内汚物の収集、清掃とを区別せず、これを一体のものとして扱っていた。そのうえ、平塚市では、従来、生し尿の汲み取りに関して、新規業者の割り込みをめぐってトラブルが発生したことがあり、そのため、許可を得ている汲み取り業者からは、平塚市長に対して、かねてより新規業者を許可する場合にはこれらの既存業者全員の同意を得たうえでするようにとの申入れがなされ、平塚市長も右申入れの趣旨を尊重して、既存業者全員の同意が得られた場合にのみ新規業者を許可するという方針をとっていたところ、湘南設備興業有限会社の本件許可申請については、これらの既存業者から許可を与えることに反対する旨の意志表示がなされていた。
このような事情があったことから、平塚市長は、前記通知を実施するに際して、生し尿の汲み取りも浄化槽内汚物の収集、清掃も同じであり、取扱上の差異はないとして、既存の汲み取り業者に生し尿の汲み取りと同じ地区割りにしたがって処理するようにさせれば足りるとの見解をとり、既存の汲み取り業者に対しては業務範囲が拡大したことを伝えただけで、許可を求めるための何らの手続をも要求しない反面、新規業者は一切許可しないとの方針を決め、湘南設備興業有限会社からの許可申請については、内部の事務処理上前記のごとき不許可の理由を記載した書面を作成したが、申請書の記載事項を具体的に審査することはもとより、平塚市内の特別清掃地域における浄化槽内汚物の収集、清掃の実態とくに当時これを取り扱っていた業者やその数、器材その他の設備、処理能力および生し尿の汲み取りとの処理上の異同などを全く調査、検討しないまま不許可の処分をした。

(二)

平塚市長が、本件の不許可処分をするに当り、湘南設備興業有限会社から提出された申請書の記載事項や右のような浄化槽内汚物の収集、清掃の実態について何らの調査、検討を経ていないことは、許可申請から不許可処分までの期間がわずか4日間という短い期間であることの客観的事実のほか、証人喜多村頴一郎(当時の平塚市清掃課長)が、当審における差戻後の証言で、
  • 厚生省の通達が出てから新規業者を認めないことにしたのは首脳部の方針で、7月(昭和37年)ころには決まっていた
  • 浄化槽の清掃を誰がやっていたかは調べていないが、業者を増やすことには助役が賛成しませんでしたから、それに対応するように6業者の仕事を拡充するという方針でした
  • 湘南設備興業有限会社から許可申請が出たとき、保有器材とか過去の営業実績の調査はしません。調査するまでもなく却下すべきだと考えました
旨を述べていることによってあきらかであり、また、浄化槽内汚物の収集、清掃と生し尿の汲み取りとを同一視し、その違いを全く意識していなかったことは、前記のとおり、不許可の理由として、
  • 生し尿と浄化槽内汚物とは同一の取扱いで処理され、作業上にも著しい差異がないので、浄化槽の清掃のみを取り扱う業者を許可することは、し尿処理の秩序、形態を乱すおそれがある
ことを挙げ、かつ、不許可処分後に浄化槽の設置者にあてて
  • 浄化槽の汚物を生し尿と同じ取扱いとする
ことを記載した書面を作成して配付していることのほかに、証人喜多村頴一郎が、原審における証言で、
  • 浄化槽の維持管理としての掃除と一般の便所の汲み取りとは作業のうえで全然差異がないと思う
  • 平塚市ではすでに6業者に対して地域を分けて許可してあって、その他に許可する区域をもちあわせていないので、ここに許可する区域を求めるとすれば6業者から削らなければならない
  • 前から生し尿の汲み取りをやっていた6業者はすでに収集、処分するについて許可を持っていたから、あらためて許可する必要はない
旨を述べ、証人西田共清(当時の平塚市助役)が、当審における差戻前の証言で、
  • 浄化槽の清掃も生し尿の汲み取りも同じもので、これを扱う業者を同一視していたから、浄化槽について特別の計らいはしていない
旨を述べていることによって動かしえないところである。
もっとも、一見すると右の認定とは趣旨を異にするとみられる証拠もないではないので、これについて判断する。
まず、証人高橋一平の当審における差戻前の証言中には、県の講義をうけたとか技術者を雇っていることを前提にして許可を与えたということではなく、現実に立ち会い仕事の能力があったのでこれでよいと思った旨を述べた部分があるが、これが、浄化槽の清掃状況を検査したうえで、その業者に対する浄化槽内汚物の収集、清掃の仕事の許否を決めたとのことを意味するのか否かはあきらかでないし、証人相原一郎の当審における差戻前の証言中には、浄化槽内汚物が市町村の収集義務の対象に指定された後、生し尿汲み取り業者は浄化槽の清掃についても平塚市長の許可をうけてやるようになった旨を述べた部分があるが、他方ではこれを否定する供述をしているうえ、前掲各証拠と対照するときは、生し尿の汲み取り業者に対して浄化槽内汚物の収集、清掃を認める特別の許可があったことは、とうてい認められない。
また、証人喜多村頴一郎の当審における差戻後の証言中には、すでに数を調べてそれに対応する態勢を整えて出発していたので、他に業者を増やす必要はなかったわけで(上司からもそのように指示されていた)、むしろ他の業者が入ることでトラブルが起る懸念があったと述べた部分があるが、生し尿の汲み取りと浄化槽内汚物の収集、清掃とを同一視し、その区別を認めない前提に立つものであることは前述のとおりであるし、同証人自身、浄化槽の清掃を誰がやっていたかは調べていないことを認める供述をしているから、他の業者が入ることでトラブルが起る懸念があったというのは、事実の根拠にもとづかない架空の議論というほかない。
いいかえれば、湘南設備興業有限会社の事業内容は浄化槽内汚物の収集、清掃に限られるのであるから、湘南設備興業有限会社に営業を許可することでトラブルが生ずるか否かは、既存の業者の事業内容たる生し尿の汲み取りとの異同をみきわめ、かつ、浄化槽内汚物の収集、清掃の実態、とくにこれを扱っている業者やその数、担当区域などの調査をまたなければ容易には判断しえないはずであるのに、右供述は、当然になされるべきこれらの調査、検討を欠くものであって、とうてい説得力をもちえないものである。

(三)

以上を要するに、平塚市長は、湘南設備興業有限会社から許可申請がなされる以前の時点で、すでに新規業者は許可しないとの方針を定め、湘南設備興業有限会社に対しその申請書の記載事項について具体的な検討を加えることもないまま不許可の処分をしたものであり、前段に説示した不許可理由も、単に不許可にするためにのみ考え出された作文にすぎないといってよいもので、浄化槽内汚物の収集、清掃の実態、とくにこれを扱っている業者やその数、器材その他の設備、処理の能力、生し尿の汲み取りとの処理上の異同などについて調査、検討した結果にもとづくものではなく、したがって、平塚市における汚物の収集処理の方針、実施状況、既存各業者の能力、処理場の現況に照らし、湘南設備興業有限会社の申請にかかる汚物取扱業許可申請を審査した結果、不適格と考えて許可しなかったものであるとの平塚市長の主張は、全く事実に反するものである。
しかも、平塚市長は、生し尿の汲み取りと浄化槽内汚物の収集、清掃とを同一視し(その原因は、平塚市長が浄化槽そのものの構造やその清掃の特質について十分な考慮を尽すことなく、前記厚生省環境衛生局長通知の趣旨を単に市町村が収集義務を負う汚物の範囲が拡大されただけであると速断したことにあるとみて妨げがない)、新規業者の許可に反対の意思を表明した既存の汲み取り業者に同調するとともに、生し尿の汲み取りの許可は得ているものの、器材その他の設備、処理能力、経験などのあきらかでない既存の業者に対して、何らの審査手続を経ることもなく浄化槽内汚物の収集、清掃の業務を可能ならしめる途を開いた反面、浄化槽内汚物の収集、清掃のみを目的とし、かつ、所定の手続を履践してなされた湘南設備興業有限会社の許可申請を不許可にしたものであって、右の処分は、浄化槽内汚物の収集を市町村の義務に加え、これを収集し浄化槽の清掃を業とするには、市町村長の特別の許可が必要であるとした前記厚生省環境衛生局長通知の趣旨、ひいては汚物の種類によって取扱業の許可に差異のあることを予定している平塚市清掃条例12条3号の趣旨にも反することはあきらかである。
(4)不許可理由について個別的検討
前段で詳述したように、本件の不許可処分は、処分当時の状況に即してみるかぎり、何らの調査、検討を経ることなく、しかも、基礎となった行政通達および平塚市清掃条例の趣旨に反してなされたもので、そのこと自体、本件の不許可処分には重大な瑕疵(かし)があることを意味する。
しかしながら、本件の不許可処分には法律上処分の理由を明示すべきことを要求されていないうえ、一般に行政処分の取消しの訴えにおいては、審理の目的となるのは行政庁の処分に含まれる判断の事後審査であるから、処分の適否もこれがなされた当時の事実状態に照らして判断すべきことはいうまでもないが、処分時に存在した事情であるかぎり、判断の資料となるのは、かならずしも行政庁が処分当時その存在を意識して斟酌(しんしゃく)したものにはとどまらないと解することができるから、以下では、本件の審理にあらわれた全ての資料を基礎にして、平塚市長が不許可の理由として主張するような事情があったか否かを検討することにする。

(一)

他地域の汚物が市営の清掃作業所に持ち込まれる危険性について平塚市長は、本件の不許可処分当時、平塚市は市営の大神清掃作業所を増設中であったが、その規模は市の人口およびその増加率を考慮しこれを前提にして決められたものであるため、ここに他の市町の汚物が持ち込まれるような事態が生ずると、処理作業に支障をきたすばかりでなく、右作業所が平塚市の費用をもって設置された目的にも反することになるが、当時、湘南設備興業有限会社は平塚市以外の汚物の収集をも行っていたので、他の地域の汚物が右作業所に持ち込まれる危険性があった旨の主張をする。そして、本件の不許可処分当時、湘南設備興業有限会社が平塚市に隣接する神奈川県中郡大磯町に本店を置き、平塚市以外の地域においても浄化槽内汚物の収集等を手広く行っていたことはその自認するところである。
しかし、平塚市長としては、平塚市内にある浄化槽の数、大きさおよび清掃の頻度(ひんど)を正確に把握するようにさえすれば(このことは、浄化槽内汚物の収集が市の責務とされた以上当然になすべきことである)、同市内の浄化槽から生ずる汚物の量もおのずと見当がつくはずであるし、清掃の際には保健所長に対してなすべきことが義務づけられていたのと同様の届出制を活用するとか、あるいは、湘南設備興業有限会社に市町別の営業地区制を採用させ、その保有する運搬車その他の器材には営業地区ごとに異なるマークをつけさせるなどの方法を講ずれば、平塚市以外の地域の汚物が前記作業所に持ち込まれる危険性は容易に防止することができるはずである。しかも、ここでの問題は、市営の清掃作業所の設置目的や処理能力との関係で生ずるものである以上、平塚市長が主張するように汚物自体について地域の識別をすることまでは必要でなく、運搬車を単位とする程度の識別の可能性をもって足りるといってよいし、右に述べた方法は技術的にみても容易に実施することができるものであるから、湘南設備興業有限会社が平塚市以外の地域で浄化槽内汚物の収集等を行っていることはさしたる問題ではなく、したがって、他地域の汚物が持ち込まれる危険性があることを不許可の理由とするのは正当でない。

(二)

清掃作業所完成までの湘南設備興業有限会社の事業に対する調査、監督の困難性について平塚市長は、湘南設備興業有限会社は平塚市の中心部から約12キロメートル離れた神奈川県中郡二宮町に汚物処理場を設けているだけで、平塚市内にはこれを有していなかったから、前記清掃作業所完成までの事情として、湘南設備興業有限会社の汚物処理の適格性を十分に調査、監督しえないことが予想される旨の主張をする。
しかしながら、≪証拠略≫によれば、平塚市清掃条例には、汚物処理場は環境衛生上支障のない場所に設けること、敷地の周囲には高さ2メートル以上の塀を設け、処理場の地盤は不浸透材で敷設し、平滑で排水に便利な構造とすること(16条)が規定されているのみで、設置場所は平塚市内に限る旨を定めた規定はなく、このことは、本件の不許可処分後の昭和38年4月1日から施行された新たな条例においても同様であることが認められるし、平塚市長が主張するような調査、監督は、かならずしも毎日ではなく20日とか1ケ月に1回行えば十分であると解されるから(ちなみに、前記条例18条は、汚物の積換場、車庫、運搬器材等について毎年1回以上市町の検査を受けなければならない旨を定める)、清掃作業所完成までの期間および当時の交通事情を考えれば、平塚市の中心部から湘南設備興業有限会社の処理場までの距離が約12キロメートルあるからといって調査、監督が困難になるとはとうていいえない。のみならず、≪証拠略≫によれば、湘南設備興業有限会社は、昭和38年当時、前記二宮町に汚物処理場を有していたほか、平塚市四之宮地区にも汚物捨場を有しており、したがって、市内に汚物処理場のあることが許可の条件とされるならば、これに応ずることも不可能ではなかったことが認められるから、平塚市長の右主張は、いずれにしても不許可の理由とはなりえない。

(三)

浄化槽内汚物の収集、清掃も許可をうけた既存の業者のみで十分であることについてこれは、平塚市長が本件の不許可処分の理由のうちでもっとも重要なものとして主張しているもので、右処分当時、平塚市内の浄化槽は平塚保健所が正式に把握したもの353個、推定では約600個あったが、浄化槽内汚物の収集、清掃は年に1回程度すれば十分であるから、既存の6業者に各担当地区内の浄化槽内汚物の収集、清掃を割り当てても1業者につき100個程度で、3日に1個の処理をすれば足りることになり、別個の業者は必要でなく、むしろこれを加えると業者間に無用の摩擦を生ずることが危惧されるというのである。
そして、≪証拠略≫によると、平塚市長が許可を与えた6人の生し尿汲み取り業者は、昭和37年9月15日現在でタンクローリー車を20台保有しており、1台で7~800ないし1,000人分の汚物を処理することができるので、浄化槽内汚物が収集の対象に加えられても平塚市全体の汚物を収集するのに十分なものであるが、前記厚生省環境衛生局長通知後、さらに浄化槽の設置数に対応するに足りるだけの設備をととのえるよう、これらの業者を指導したというのである。
しかしながら、前述したように、平塚市長は、生し尿の汲み取りと浄化槽内汚物の収集、清掃を同一視し、後者の特殊性を全く考慮していないのであって、右収集、清掃の実態、とくにこれを扱っている業者やその数、必要な器材その他の設備、能力などについての調査、検討をしていないのであるから、既存の6業者のみで浄化槽内汚物の収集、清掃が可能であるというのは、単なる推測の域を出ないものである。のみならず、前にも触れたとおり、昭和37年に前記厚生省環境衛生局長通知が発せられるころまでの平塚市内では、生し尿の汲み取り業者の中にも浄化槽内汚物の収集、清掃を行っている者がないではなかったが、これを専門に扱っている業者もおり、しかも、生し尿の汲み取りのような担当区域の取り決めがないため営業範囲も一定せず、平塚市以外の業者でありながら平塚市内に入ってきて営業している者もいたというのが実情であったうえに、≪証拠略≫によると、これらの業者の中でもっとも多く浄化槽内汚物の収集、清掃を行っていたのは、湘南設備興業有限会社の代表者(奥山大次郎)が当時取締役をしていた大磯町所在の湘南興業有限会社であって、平塚市内の汲み取り業者のうちでは有限会社東海清掃社がこれに次ぐ程度の実績を有するだけであり、その他の業者は汲み取りを本業とするかたわらごくわずかの浄化槽を扱っていたにすぎないことが認められるから、平塚市長の許可をうけた生し尿の汲み取り業者の全部がひとしく浄化槽内汚物の収集、清掃をするのに必要な器材その他の設備や経験、能力を有していたとはいえないことがあきらかであり(むしろ、これらの業者のほとんどは、右のような設備や経験、能力を有していなかったとみてよい)、したがって、汲み取り業者に生し尿と同じ地区割りに応じて浄化槽内汚物の収集、清掃をやらせるようにすれば足りるというのは、むしろ誤りでさえあるといわざるをえないし、既存の業者の事業内容である生し尿の汲み取りと、浄化槽内汚物の収集、清掃とは、浄化槽を媒介にして明確に識別することができるものである以上、浄化槽内汚物の収集、清掃のみを目的とする業者を加えたからといって、業者間に無用の摩擦を生ずるとか、し尿処理の秩序、形態を乱すというおそれもほとんど存在しなかったものというべきである。
なお、この点に関して、≪証拠略≫の中には、生し尿の汲み取りを行っていた業者は、前記厚生省環境衛生局長通知の実施後、それまでの担当地区ごとに正式に浄化槽内汚物の収集、清掃をも扱うようになったが、処理能力に不足はなく現在に至るまで特段の支障も生じていないという趣旨の供述をした部分があるが、湘南設備興業有限会社代表者が、当審における差戻後の尋問(第1回)で、毎月15ないし18件の苦情申出があり、右代表者が保健所の依頼をうけてその調査をしたことがあると述べていることと対照して直ちには信用しがたいし、かりに右供述のとおり特段の支障が生じていないとしても、それは本件の不許可処分後の事情であって、需要の少ない冬期間を利用して応急に必要な器材等の整備をしたためとも考えられるから、右処分の適否を判断するうえでの資料とはなしえない。

(四)

湘南設備興業有限会社が浄化槽内汚物以外について収集の許可をうけていないことについて平塚市長は,湘南設備興業有限会社は浄化槽の汚物以外の汚物についてはその取り扱いにつき全く許可をとっていないが、汚物は浄化槽の汚物であれその他のものからであれ、汚物としての取り扱いには何ら差異はないので、湘南設備興業有限会社が浄化槽の汚物以外の汚物を許可なく収集しても識別することが困難であり、その営業に対する監督には困難な点があると主張する。
ところで、清掃法3条によれば、同法で汚物というのは、「ごみ、燃えがら、汚でい、ふん尿及び犬、ねこ、ねずみ等の死体をいう」ものとされているから、平塚市長の右主張は、湘南設備興業有限会社が生し尿の汲み取りをする場合を想定しているものと解されるが(本件ではそれ以外の汚物は問題となる余地がない)、すでにみたとおり、生し尿については、平塚市長の許可をうけた業者が平塚市全体を区割りし、それぞれの担当地域を定めて独占的に営業しているため、他の業者が入り込んで汲み取りを行う余地はないうえ、本件の不許可処分時には、汲み取り料金の支払いを現金払いから納額告知書の方法(切符制)にきりかえることが決定されていて、業者が直接に市民から料金の支払いをうける余地はなくなることになっていたのであるから、湘南設備興業有限会社が、既存業者の反発が予想され、しかも収入の見込みのない生し尿の汲み取りをあえて行うことはほとんど考慮する必要がないといってよく、とうてい不許可の理由にはなりえないというべきである。

(五)

関連する問題点について以上で平塚市長が主張する不許可理由の個別的な検討を終えたが(本件の不許可処分の際、内部の事務処理上不許可の理由とされた3点の理由についてもあわせて検討されたことになる)、ここでは、平塚市長が直接に不許可の理由としているわけではないが、関連して言及するのが相当とおもわれる2つの問題について検討を加えることにする。
  1. 本件の許可申請が、厚生省環境衛生局長通知の実施後であったことについて 証人喜多村頴一郎は、当審における差戻後の証言で、新規業者を加えた場合の問題として、
    「浄化槽についても(既存の6業者に対して)従前の区割りによるように指示して1月1日(昭和38年)から出発していたので、又やり直すとすれば大変である」
    と述べ、湘南設備興業有限会社からの許可申請が前記厚生省環境衛生局長通知の実施後である昭和38年1月8日になされたことが不許可の理由であったともうけとれる供述をしている。
    そして、平塚市長の指示にしたがって既存の汲み取り業者による浄化槽内汚物の収集、清掃の体制が実際に動き出していたものとすれば、そのこと自体の当否は別にして、その後になって湘南設備興業有限会社の許可申請を認めることは、まさに割り込み以外の何物でもなく、かえって混乱を生ずることにもなりかねないが、本件では、許可申請をするにつき何時までといった期限の定めがあったことを認めるべき証拠は存在しないうえ(もっとも、前記厚生省環境衛生局長通知が「汚物取扱業者の手続」等の関係を考慮して、実施までの間に約8ケ月の準備期間を置いているところをみると、汚物取扱業の許可についても、一定の期限を切った申請の受理、審査、決定の手続の履践を予定していたのではないかともおもわれるが、平塚市長がかかる手続を履践した形跡はない)、本件許可申請がなされたのは右通知の実施期日からわずか8日後であって、既存の汲み取り業者が当時までに浄化槽内汚物の収集、清掃に必要な器材の購入、人員の確保その他の準備をしていたことをあきらかにした証拠はなく、かえって前認定のとおり、平塚市長も、昭和38年1月12日付でなした本件の不許可処分において、これらの業者および従業員にさらに浄化槽の清掃に関する教育を徹底するとともに、清掃および検査に必要な器材を整備させれば、浄化槽の清掃に支障はないとし、これらの準備を将来の課題としていたこと(もっとも、証人喜多村頴一郎は、前記証言で、右の不許可理由に関して、
    「従業員、器材とも整備させました」
    と述べ、本件の不許可処分当時にはすでに準備が完了していたかのごとく供述しているところがあるが、他方では、既存の汲み取り業者は、業務範囲が拡大したとの平塚市長の通知にもとづいて、
    「浄化槽の数に対応できる人員、器材を整備したはずです」
    と確実性を欠く供述をしており、前記不許可理由ともあわせると右供述は採用に値しない)、≪証拠略≫によると、一般に冬期間は細菌の活動が活発でないため浄化槽の清掃には適せず、需要も少ないことが認められているところからすると、本件の不許可処分当時には、既存の汲み取り業者もいまだ十分には浄化槽内汚物の収集、清掃に必要な器材の購入、人員の確保などはしていなかったことが推認され、したがって、これらの業者による浄化槽内汚物の収集、清掃の体制が実際に動き出してはいなかったといってよいから、湘南設備興業有限会社からの許可申請が前記厚生省環境衛生局長通知の実施後であったからといって、これを許可すると逆に混乱をまき起すおそれがあるともいえないので、何ら具体的な検討を加えることもなく不許可の処分にしなければならないほどの理由にはなりえないものというべきである。
  2. 湘南設備興業有限会社の設立が許可申請の直前であることについて平塚市長は、湘南設備興業有限会社が昭和37年11月2日に設立された会社であり、同年12月末日までに取り扱った浄化槽の数がわずか6個にすぎないとして、その設立時期が新しく、かつ、実績が乏しいことを問題にしている。
    しかしながら、≪証拠略≫によると、湘南設備興業有限会社の代表者である奥山大次郎は、昭和34年ころから浄化槽の管理、清掃業者となることを志し、そのための法規や技術に関する講習をうけるなどしたうえ、昭和36年6月、大磯町に本店を置く湘南興業有限会社の取締役に就任して本格的に浄化槽の清掃の仕事をするようになったもので、右奥山自身の浄化槽に関する知識、経験は決して少なくはないとみられるし、かくするうち右奥山は、浄化槽の管理、清掃業が新たに許可制になることを知ってそのための専門会社を作ることになり、昭和37年7月ころ、右湘南興業からバキュームカーその他の器材、従業員を分けてもらって独立し、昭和37年11月2日、浄化槽の管理、清掃を主たる目的とした湘南設備興業有限会社を設立してみずから代表取締役に就任し、引き続き浄化槽の汚物の収集、清掃の営業を行っていた事実を認めることができる。
    右の事実によれば、湘南設備興業有限会社は浄化槽の管理、清掃を目的とする専門の業者として発足したもので、一応そのために必要な器材その他の設備を有し、代表者を含む所要人員も揃っていたものとみることができるから、生し尿の汲み取りを本業とするかたわら、わずかに浄化槽内汚物の収集、清掃を手がけていたにすぎない平塚市内の既存業者と対比して、そのための設備、能力に劣るところはないといってよく、したがって、湘南設備興業有限会社が許可申請の直前に設立された新規業者であり、みるべき実績がないことは、とりたてて問題とするには足りず、むしろ、平塚市長としては、浄化槽内汚物の収集、清掃業が許可制になった趣旨をみきわめ、生し尿の汲み取り業者との比較において、右のような湘南設備興業有限会社の設備、能力、人員等を検討し、汚物取扱業者の許否を決定する必要があったものというべきである。
(5)結論
以上詳しく認定したように、平塚市長は、湘南設備興業有限会社からなされた許可申請についての具体的な審査はもとより、その前提となるべき平塚市内の特別清掃地域における浄化槽汚物の収集、清掃の実態についての調査、検討を行うこともなく、いわば門前払いの形で不許可処分をしたものであって、その際に挙げられた不許可の理由ないし平塚市長が本訴で主張する不許可の理由は、全く事実の裏づけを欠くものであるか、あるいは、ほとんど起りうる可能性のないものや技術的に防止の可能な事項を列挙したにすぎないものであり、とうてい真実なものということはできず、本件の不許可処分に合理的な理由をみいだすことはできない。
もとより、平塚市長がこのような処分をした背景としては、前記厚生省環境衛生局長通知が発せられた当時、平塚市では清掃作業所の増設および生し尿の汲み取り料金の支払い方法の改善を計画中であって、その遂行に関心が集中していたためとみられないではないが、直接の原因が、既存業者の利益保護に目を奪われて、新規業者の許可に反対する生し尿の汲み取り業者の意向に安易に同調するとともに、清掃を含めた浄化槽内汚物処理の特殊性、重要性に思い至らず、右通知を単に市が収集義務を負う汚物の範囲が拡大されただけであると速断し、浄化槽内汚物の収集、清掃の業務を新たに許可の対象に加えたその趣旨を無視したことにあることはあきらかである。
その結果、平塚市長は、ほとんど設備、経験、能力のない生し尿の汲み取り業者をして、何らの審査手続を経ることなしに浄化槽内汚物の収集、清掃の業務に当らせることをもって十分であるとし、右通知の実施にそなえて浄化槽の管理、清掃を事業目的に設立され専門業者としてのスタートをきっていた湘南設備興業有限会社の許可申請を却下したものであって、浄化槽内汚物の衛生的処理をはかることにより生活環境の向上を企図した右通知の趣旨に反することとなったといわなければならない。
平塚市長は、湘南設備興業有限会社が右通知の発せられる以前から浄化槽内汚物の収集、清掃を業としていた既存業者であるから当然に営業の継続を許すべきであったと主張するのに対しては、右通知は、浄化槽の汚物の増加に対処して、汚物の収集処理業者のうち営業能力の乏しいもの、不良なものを除外し、よって浄化槽内汚物の収集処理につき生ずるおそれのある公衆衛生上の不都合を除こうとするものであるから、既存業者であるということで従前どおり営業を許可していたのでは、その目的を達成することができなくなるし、市町村としては右通知により負担することとなった収集義務を怠っていることにもなると反論するが、みずから、その主張とは反する結果を惹起(じゃっき)する矛盾を犯していることになる。果してそうだとすれば、一般に市町村長が汚物取扱業の許可を与えるかどうかは、清掃法の目的と当該市町村の清掃計画とに照らし、市町村がその責務である汚物処理の事務を円滑完全に遂行するのに必要適切であるかどうかという観点に立ってこれを決すべきものであり、市町村長の裁量に任されているものとしても、本件の不許可処分にはそれ自体合理的な理由がないのみならず、前提となる行政通達に対する誤解があったため、結果においても妥当性を保しがたいものであり、平塚市長が清掃法によって与えられた汚物取扱業の許否についての裁量権行使の正当な範囲を逸脱した違法があるといわざるをえない。

    四、

    以上の次第で、平塚市長が、湘南設備興業有限会社からなされた昭和38年1月8日付汚物取扱業許可申請について、同年1月12日になした不許可処分は違法なものとして取り消されるべきであり、右取消しを求める湘南設備興業有限会社の本訴請求は正当としてこれを認容すべきであるから、右請求を棄却した原判決を取り消し、本件訴訟の総費用は行訴法7条、民訴法96条、89条を適用して全部平塚市長に負担させることにして主文のとおり判決する。

    東京高等裁判所第14民事部  
    裁判長裁判官 吉岡 進
    裁判官 兼子 徹夫
    裁判官 太田 豊
  • これほど詳細にわたって認定されれば、これをくつがえすことは、とても出来ませんね。
  • それでも、平塚市長は、再び、東京高等裁判所の判決の破棄を求めて上告しました。しかし、最高裁判所は、昭和53年3月31日、上告を棄却する旨の判決を言い渡しました。判決理由は次のとおりです。
最高裁判所の判決理由

    本件不許可処分は裁量権行使の範囲を逸脱した違法のものであるとした原審の認定判断は、原判決の挙示する証拠関係及びその説示に照らし正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。また、右不許可処分後既に10余年を経過し、社会情勢が著しく変化したからといって、被上告会社(湘南設備興業有限会社)が右不許可処分の取消しを求める訴えの利益を失ったとみることはできない。(上告代理人の上告理由の)論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は独自の見解に立って原判決の違法をいうものであって、採用することはできない。よって、行政事件訴訟法7条、民訴法401条、95条、89条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

    最高裁判所第2小法廷  
    裁判長裁判官 本林 譲
    裁判官 大塚 喜一郎
    裁判官 吉田 豊
    裁判官 栗本 一夫
  • これほど詳細にわたって認定されれば、これをくつがえすことは、とても出来ませんね。
  • それでも、平塚市長は、再び、東京高等裁判所の判決の破棄を求めて上告しました。しかし、最高裁判所は、昭和53年3月31日、上告を棄却する旨の判決を言い渡しました。判決理由は次のとおりです。
違法行為に基づく損害賠償
  • 最高裁判所が、「不許可処分後既に10余年を経過し、社会情勢が著しく変化したからといって、不許可処分の取消しを求める訴えの利益を失ったとみることはできない」と述べているのは、なるほどと合点がゆきますね。
  • 最高裁判所が判決理由の中でその点に触れているのは、平塚市長の代理人が上告理由の中で、「不許可処分取消判決が単に不許可処分を取消すのみであって、その効果として申請の時点に立ちかえって上告人市長が再度審査を行って、あらためて許可、不許可を決定すべき効果を生ずるというのであるならば、本件申請からすでに10余年を経過し、その間平塚市の人口は約2倍に増加し、社会情勢が著しく変化したことは公知の事実であるから、今更不許可処分を取消すことは無意味である。すなわち、権利の崩壊と同様の法理により、本件訴訟はもはや訴えの利益を失ったものというべきである」と主張したからです。
  • 当時の清掃法でも汚物取扱業の許可には期限を付するものとされていましたし、現在でも一般廃棄物処理業や浄化槽清掃業の許可には期限を付すものとされており、市町村の多くは、その期限を1年としていますが、許可申請をして不許可処分となり、その取消しを求めて提訴した場合、裁判がその許可期限の1年間以内に終わる例はほとんどありませんから、裁判で、1年経ったら「許可期限を経過したから、訴えの利益は失われた」ということになれば、取消訴訟を提起することは無意味となってしまいますね。
  • この事件のように、15年以上も経ってから不許可処分が取り消されたのでは、仕事の面で、失われた過去の実績を回復する術(すべ)はありませんが、だからといって、行政庁がなした違法な処分のために蒙った損害をそのまま不問に付してよかろう筈はありません。当然、金銭をもって補償すべきです。
  • この事件で、平塚市長は7,500万円の賠償金を支払ったということですが、その損害賠償請求についても、やはり裁判が行われたのですか。
  • いや、話し合いで決着がつきました。しかし、話し合いはなかなか大変だったようです。
  • それにしても、湘南設備興業有限会社の代表者である奥山大次郎さんは、よくぞ耐え抜いたものですね。
  • 奥山氏は、第1審は本人だけで争い、第1審に敗れた後、2人の弁護士に委任し、ついには4人の弁護士に訴訟代理人を依頼したのですが、提訴してから「不許可処分を取り消す」との判決が確定するまでに費した15年余りの歳月は、決して短いものではありません。戦時中、仏印、タイ、マレー半島、ビルマに転戦し、両上膊骨折貫通銃創、後頭部盲銃創の重傷を負い、帰国した後、静岡県伊東市において傷痍厚生同志会を結成した経歴をもつだけに、不屈の敢闘精神がそうさせたのでしょうが、それにしても、市長を相手とした長年にわたる法廷闘争は、なみたいていの苦労ではなかったでしょう。
  • 2度にわたる最高裁判所での審理を経て、平塚市長がなした不許可処分は違法であることが確定したのですから、奥山さんとしては、胸を張って損害賠償の請求をすることが出来たわけですね。
  • 奥山氏は、昭和53年5月17日、平塚市長に対して、得べかりし利益、信用毀損による損害、営業用機械等の損失、訴訟のために要した費用などを含め総額3億6,900万円余りの損害賠償を請求しました。昭和37年5月12日付環発第162号、厚生省環境衛生局長通知が発せられた当時、湘南設備興業有限会社が平塚市内のし尿浄化槽の大半の清掃を行っていたこと、平塚市長が許可を与えていた6人の生し尿汲み取り業者の殆どは、し尿浄化槽の清掃に必要な器材その他の設備や、経験、能力をもっていなかったものとみられる状態であったことは、東京高等裁判所が差戻審の判決で認定しているところですし、し尿浄化槽の清掃を含む槽内汚物の収集を行うために必要な器材、設備、経験、能力をもっていない者にし尿浄化槽内汚物取扱業の許可を与えるべきでないことは、清掃法はもとより、その環境衛生局長通知の趣旨からみて当然のことですから、環境衛生局長通知に基づいて業者に許可を与えるに当って、その実績と能力に応じた正当な許否がなされていたならば、平塚市の区域内で年を逐うて激増したし尿浄化槽の多くについて、その清掃を湘南設備興業有限会社が引き受けていたであろうことは想像に難くありません。そうだとすれば、湘南設備興業有限会社が昭和38年以来15年余りの間に得べかりし利益は相当な金額に達していたでしょう。
  • 営業用車両や器具についての損失、処理場敷地の維持管理に要した費用、従業員に対する補償などもありますし、それに、訴訟のために費した経費も決して少なくはなかったでしょうね。
  • また、平塚市において以前から実績をもち、したがって、許可されて然るべきであったにもかかわらず、不許可処分に付されたことから、湘南設備興業有限会社なり同社の代表者である奥山大次郎氏にそれなりの落ち度があったものと見られ、そのために信用を失い、意外な損失を蒙ったであろうことが推測されます。そして、それらの一切の責めを負うべきは、勿論、平塚市長ですから平塚市長としてはその責任を痛感して十分に誠意を示すべきでした。
  • そうですね。
  • ところが、厳冬の季節に、暖房がよくきいた列車に乗っていれば、霜に凍る野良で働く農民の姿を窓の外に眺めても、農民の寒さ苦しさを実感として理解するのが難しいのと同じように、訴訟が15年以上にわたっても、賠償交渉がどんなに長引いても、定められた日にはきちんきちんと給与が支払われる市長や助役たちには、市長の違法な処分によって営業を廃止させられ、社会的な信用を失い、そのうえ、市長を相手に訴訟することがまるで無法者の行為ででもあるかのように思い勝ちな人たちの冷たい眼に耐えながら、傷痍の身に鞭打って闘ってきた奥山大次郎氏の長年にわたる苦しみを理解することができなかったようです。
  • 話し合いは難航したのですか。
  • ええ、1年7か月余りもかかりました。そして、ようやく昭和54年の暮れもおしつまった12月22日になって、次のような内容で和解が成立しました。
  • 和解契約書

    湘南設備興業有限会社(代表取締役奥山大次郎)を甲とし、奥山大次郎を乙とし、平塚市を丙とし、本日、汚物取扱業不許可処分問題に伴う損害賠償について協議の結果、つぎの条項のとおり和解契約を締結した。

    • 第1条|丙は、甲に対し汚物取扱業不許可処分に基づく甲の損害の賠償として総額金5,001万3,705円を昭和54年12月25日までに支払うものとする。
    • 第2条|丙は、乙に対して汚物取扱業不許可処分に基づく乙の損害の賠償(慰謝料)として、総額金2,500万円を昭和54年12月25日までに支払うものとする。
    • 第3条|甲、乙、丙の三者は、丙の甲に対する汚物取扱業不許可処分をめぐっての紛争は本和解をもって一切終結したことを確認し、甲および乙は本和解契約に定めるもの以外の本件に関連するあらゆる請求を放棄する。この契約の成立を証するため本証3通を作成し、各自署名押印のうえ、甲、乙、丙それぞれ1通を保有する。
    昭和54年12月22日    
    (甲)湘南設備興業有限会社 代表取締役 奥山大次郎
    (乙)   奥山大次郎
    (丙)平塚市 市長 石川京一 印
  • こうして事件は終結しましたが、ここでも、市長が犯した違法な処分のツケは、住民たちの大切な血税によってあがなわれる結果となりました。私たちは、奥山氏に支払われた7,500万円余りの賠償金は、市長が、奥山氏からし尿浄化槽の清掃の仕事を取り上げ、それを6人の生し尿汲み取り業者に分けてやったために、罪とがもない住民たちの血税の中から支払わねばならなくなったものだということを、決して忘れてはなりません。(註・賠償金は手取り金額)